中国越境EC出店・費用

越境ECの始め方【中国向け・企業向け】手順の前に決める6つのこと——越境か一般貿易か、期間、予算の上限

更新 約15分で読めます監修:株式会社エフカフェ 越境EC事業部

この記事の要点

中国向け越境ECは、手順の前に6つのことを上から順に決めると後戻りが少なくなります。

  • 向き不向き:規制への適合、需要の芽、価格の納得感の3点で「やるか・やらないか」を判断します。
  • ルート:早く直接売るなら越境EC、卸・店頭まで広げるか登録を取れるなら一般貿易が候補です。
  • やめる条件:テストの期間、投じる上限、見る指標、判断する日と人、やめる条件を始める前に決め、社内で合意しておきます。

越境ECの始め方を調べると、「国を決める→出店方法を選ぶ→準備する」といった手順の解説が多く見つかります。ただ、一般的な手順だけでは、中国に商品を出す会社が最初にぶつかる問い——越境ECで始めてよいのか、一般貿易にすべきか——は判断しにくいはずです。中国では、どちらのルートで入れるかによって、必要な登録、かかる税、売ってよい相手が変わります。ここが決まらないまま手順に進むと、出店の準備を進めたあとで振り出しに戻ることになります。

本記事は、メーカー・ブランド企業が中国向けの越境ECを始めるときに、手順の前に決めておく6つのことを、判断の基準と確認先の一次資料とともに整理します。個人の副業として海外販売を試したい方には、JETRO「JAPAN MALL事業」の記事が参考になります。

結論:中国で越境ECを始める前に決める6つのこと

向き不向きからルート、モール、期間、予算、体制の順に決めると、後戻りが少なくなります。

中国向けの越境ECは、次の6つを上から順に決めると後戻りが少なくなります。前の判断が決まらないと、次の判断の材料がそろわないためです。

順番決めること決めないまま進むと起きること
① 向き不向き自社の商品は中国の越境ECに向いているか規制で出せない商品に準備の時間を使う
② ルート越境ECか、一般貿易か登録・税・売り先の前提が後からひっくり返る
③ モール天猫国際・JD国際などのどこで売るか集客の前提と費用が合わない
④ 期間いつまでに何が起きる見込みか成果が出る前に社内の支持を失う
⑤ 予算とやめる条件いくらまで投じ、何が起きたらやめるか見込みのない出店を続ける/早すぎる撤退
⑥ 体制社内に残す仕事と、外に任せる仕事任せた先と判断がかみ合わない

出店申請や書類の準備といった「手順」は、この6つが決まってから始めるものです。手順そのものは、記事の後半(決めたあとの手順)にまとめました。

越境ECとは:中国に商品を入れる2つのルートと、誰が売るか

越境EC小売輸入と一般貿易では登録、税、在庫の置き場所が違い、ルートと売り手は別々に決めるものです。

越境ECは、インターネットを通じて国境をまたいで商品を売る取引です。本記事で扱うのは、日本の企業が中国の消費者に直接売る形です。中国向けの場合、日本から中国に商品を入れるルートは大きく越境EC(越境EC小売輸入)と一般貿易の2つに分かれます。

輸入ルート買い手商品ごとの登録・届出税在庫の置き場所
越境EC小売輸入中国の消費者(個人で使う分に限る)初回輸入の許可・登録・届出の要求は執行されない(条件つき・決める②)購入者1人あたりの枠内なら、関税0%・増値税と消費税は法定税額の70%中国の保税区、または日本から直送
一般貿易中国の輸入者・卸・小売店を経て消費者へ化粧品・保健食品などは品目ごとの登録・届出が必要通常の関税・増値税・消費税中国国内(一般の流通在庫)

もう一つの軸が「誰が売るか」です。自社で出店して運営する、運営代行会社に任せる、現地の代理店・卸に任せる、の3つがあり、代理店は一般貿易で輸入することも、越境ECの店舗を運営することもあります。ルートと売り手は別々に決めるもの、と考えると整理しやすくなります。

代金の受け取り方もルートと売り場で変わります。天猫国際に出店する場合、消費者が支払った代金はいったん支付宝(Alipay)に入り、取引が成立すると天猫国際が支付宝に通知して、出店者に代金が支払われます。出店者は国際支付宝の口座を開き、保証金・売上代金・手数料はこの口座でやり取りします(天猫国際の利用規約1・出店者向け契約2による)。入金の通貨や周期は規則に書かれていないため、契約の段階で確かめてください。自社の越境ECサイトで売る場合は、決済の手段も自社で用意することになります。

天猫国際に出店する場合、消費者が支払った代金はいったん支付宝(Alipay)に入り、取引が成立すると天猫国際が支付宝に通知して、出店者に代金が支払われます。保証金・売上代金・手数料は国際支付宝の口座でやり取りします。入金の通貨や周期は規則に書かれていません。

決める① そもそも自社は向いているか

規制に適合するか、中国に需要の芽があるか、価格の納得感を作れるかの3点で、やるかやらないかを先に決めます。

最初の判断は「やるか・やらないか」です。ここを飛ばして市場調査から入ると、調査の結論が「参入ありき」に寄ってしまいます。見るのは次の3点です。

  • 規制に適合するか — 商品の成分・カテゴリが、中国の規制とモールの規則で販売できるか。ここが不可なら、ほかの条件がどれだけ良くても始められません
  • 中国に需要の芽があるか — 「日本で人気」ではなく、中国で自社のカテゴリが実際に買われ、検索されているか
  • 価格の納得感を作れるか — 物流費と税を上乗せした中国での価格で、現地の代わりの商品と比べて選ばれる理由を説明できるか

具体的な判断の軸は「越境ECのリスクと向き不向き」の記事で解説しています。規模の面では、経済産業省の調査で、中国の消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2兆6,372億円(2024年・前年比8.5%増)と推計されています(出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」3)。市場が大きいことと、自社の商品が売れることは別の問いです。

決める② 越境ECか、一般貿易か

法的に越境ECで売れるか、税の優遇が効くか、事業として合うかの3段に分けて判断すると混乱しません。

中国向けで最も大きな分かれ道がここです。判断は3段に分けると混乱しません。①法的に越境ECで売れるか、②越境ECの税の優遇が効くか、③事業として越境ECが合っているか、です。

段階確かめること根拠
① 越境ECで売れるか ・商品が「越境EC小売輸入商品リスト(ポジティブリスト)」に載っているか
・税関とつながったプラットフォームで、注文・支払い・物流の3つの情報を照合できる形で売るか
・買い手が個人で使う消費者か(卸や再販売には使えない)
ポジティブリスト(2019年版・2022年調整)/財関税〔2016〕18号4(照合)/商財発〔2018〕486号5 第四条(個人で使う物品・再販売の禁止)
② 税の優遇が効くか ・購入者1人あたり、1回5,000元・年26,000元の枠内か
・枠内なら関税0%、増値税と消費税は法定税額の70%
財関税〔2018〕49号6(枠)/財関税〔2016〕18号(税率)
③ 事業として合うか ・商品ごとの登録・届出を待たずに始めたいか
・中国の卸や店頭にも並べたいか
商財発〔2018〕486号 第三条(登録・届出の要求の不執行)/第四条(再販売の禁止)

①のポジティブリストは、商品名ではなく税則番号(HS8桁)の単位で作られています。自社の商品の税則番号でリストを引き、備考欄に書かれた限定条件(「保税で売るものに限る」など)まで読んで確かめます。リストは2019年版(財政部など13部門の公告2019年第96号7)が本体で、2022年に商品の追加・削除、税則番号の改定、備考の変更が行われました(公告2022年第7号8)。2022年に公表された表は変更点だけをまとめたもので、全体の一覧ではありません。2019年版で引き、2022年の変更を当てて確かめます。2022年の表だけを見て「載っていない」と判断しないことが大切です。手順はポジティブリストの記事で詳しく解説しています。

②の税の枠は、購入者ひとりに対する枠で、ブランド側の販売額の上限ではありません。1回5,000元を超える注文でも、年26,000元の枠内で1つの注文に商品が1点だけなら越境ECで輸入できますが、その場合は優遇がなく全額課税されます(税制の記事)。

③の登録について、486号第三条は、越境EC小売輸入の商品を「個人で使う物品」として扱い、その商品の初回輸入の許可・登録・届出の要求を執行しないと定めています。化粧品なら、条件を満たせば、一般貿易で必要になるNMPA(国家薬品監督管理局)への初回輸入時の登録・届出の要求は執行されない、ということです。条件とは、ポジティブリストに載っていること、注文・支払い・物流の情報を照合できることなどで、輸入が止められる例外もあります。ただし、これは規制への対応がすべて不要になるという意味ではありません。リストの条件、成分の規則、モールの出品規則は越境ECでも効きます(NMPAと越境ECの記事・化粧品成分の確認手順の記事)。

まとめると、消費者に直接売り、登録を待たずに早く始めたいなら越境EC、中国の卸・店頭まで広げたい、または登録を取る体制がすでにあるなら一般貿易が候補になります。越境ECで需要を確かめたあと、一般貿易に必要な登録・成分の確認・中国語の表示・輸入体制を別に整え、それに適合できる場合に一般貿易への移行を検討する、という進め方もあります。この場合も、越境ECで売った商品を卸や店頭に回すことはできない点に注意してください。

決める③ どのモールで売るか

本格展開なら天猫国際などの大手モール、需要の確認なら軽量な販売枠で、自社サイトは集客が自力になります。

越境ECで始めると決めたら、どこで売るかを選びます。中国の越境ECでは、天猫国際(Tmall Global)・JD国際(京東国際)のような越境ECモールに出店するのが一般的で、抖音(Douyin)・小紅書(RED)は集客や販売の場として組み合わせて使われます。

選択肢向いているケース詳しい記事
大手の越境ECモールに出店ブランドとして本格的に展開したい。審査・費用は相応にかかる天猫国際(Tmall Global)とは
モールの軽量な販売枠本出店の前に、需要と価格の反応を確かめたい天猫国際「探物」
自社の越境ECサイトすでに中国に指名の需要やSNSのフォロワーがある。集客は自力中国ECプラットフォーム比較

「手数料が安いから」で自社サイトを選ぶのはよくある失敗です。モールと自社サイトでは、費用だけでなく集客の前提が違います。

決める④ いつまでに何が起きるか(期間の目安)

出店の作業は〜3か月、認知をつくる段階は3〜6か月、売上を広げる段階は6か月〜が当社の目安です。

社内で最も聞かれるのが「いつ売れるのか」です。当社が天猫国際・JD国際などで支援する場合の目安は、次のとおりです(当社の公開している目安で、業界の統計ではありません)。

段階目安主にやること
出店の作業〜3か月モールへの出店申請、店舗づくり、商品登録、保税区・直送を含む物流の設計
認知をつくる3〜6か月小紅書・抖音でのコンテンツ展開、モール内広告、口コミ・レビューの土台づくり
売上を広げる6か月〜ライブコマースとKOLの本格起用、W11(独身の日)・618などの大型セール

この3つの段階とは別に、当社のサービスページでは「出店から販売開始まで3〜6か月が目安」としています。上の「出店の作業」は申請から店舗づくりまでの作業の期間で、販売開始までの期間はモールの審査や商品登録の進み方を含めて考えます。モール、商品の数、規制のあるカテゴリかどうかで前後します。認知をつくる段階は売上より投資が先に立つ時期なので、最初の半年で黒字になる前提の計画は、社内で見直しを迫られやすくなります。

いつまでに何が起きるか(期間の目安)。当社の公開している目安で、業界の統計ではありません。出店の作業:〜3か月、認知をつくる:3〜6か月、売上を広げる:6か月〜。これとは別に、出店から販売開始まで3〜6か月が目安。判断する日と人(書き方の例):6か月時点と12か月時点。判断するのは予算を持つ人。テストの期間:出店から12か月(認知をつくる段階を含める)。最初の半年で黒字になる前提の計画は、社内で見直しを迫られやすくなります。

決める⑤ いくらまで投じて、何が起きたらやめるか

費用は出店、運営、物流、税、販促の5つで、テストの期間と投じる上限とやめる条件を始める前に数字で決めます。

「越境ECは儲かるのか」には一般論で答えられません。それでも、費用の構造とやめる条件は始める前に決められます。費用は主に次の5つです。

  • 出店 — モールの保証金・年費・手数料(天猫国際の費目と公式の額は費用の記事)
  • 運営 — 運営代行に任せる場合の費用、または社内の人件費
  • 物流 — 保税区に在庫を置くか、日本から直送するかで変わる(物流の記事)
  • 税 — 越境EC総合税など(税制の記事)
  • 販促 — 立ち上げの時期は売上に対する広告・販促費の割合が高くなる

そのうえで、次の表を始める前に埋めて、社内で合意しておくことをおすすめします。

決めること書き方の例
テストの期間出店から12か月(認知をつくる段階を含める)
投じる上限初期費用と月々の費用の合計で、上限額を1つ決める
見る指標売上だけでなく、店舗の評価・リピート・広告費の割合など、段階に合ったもの
判断する日と人6か月時点と12か月時点。判断するのは予算を持つ人
やめる条件「12か月時点で◯◯に届かなければ撤退または縮小」と、数字で書く

やめる条件がないと、見込みのない出店をずるずる続けることになります。逆に、期間を短く切りすぎると、認知をつくる段階の途中で撤退することになります。期間は決める④の目安と合わせて決めてください。

決める⑥ 誰がやるか — 社内に残す仕事と任せる仕事

予算や撤退の判断と商品や薬事の窓口は社内にしか担えず、店舗運営や広告運用は運営代行に任せられます。

運営代行(中国ではTP=Tmall Partnerなど)に任せる場合でも、社内に残さなければならない仕事があります。

役割内容任せられるか
判断する人予算・価格・撤退の判断。月に一度は数字を見て決める任せられない
商品・薬事の窓口成分情報・品質の書類の提供、規制対応の一次判断任せられない(自社にしか答えられない)
数字を読む人売上・広告・在庫のレポートを読み、質問できる兼務でよい。育てておきたい
店舗運営・顧客対応出品・販促・中国語での対応任せられる
広告運用・KOL施策中国のプラットフォームでの集客任せられる(成果の測り方は社内で決める)

任せる先の選び方は運営代行パートナーの選び方の記事で、モールの公式の評価制度をもとに解説しています。

決めたあとの手順:出店から販売開始まで

天猫国際なら規制の確認、モール選び、出店申請、物流設計、店舗づくり、販売開始と改善の順に進めます。

6つが決まったら、ようやく手順の出番です。天猫国際に出店する場合の大まかな流れは次のとおりです。

  1. 商品の規制を確かめる — ポジティブリスト、成分、モールの出品規則
  2. モールと出店の形を決める — 店舗の種類と、必要な商標・書類を確認する
  3. 出店を申請する — 出店主体の要件とカテゴリごとの書類をそろえる
  4. 物流を設計する — 保税区に在庫を置くか、日本から直送するか
  5. 店舗をつくり、商品を登録する — 中国語の商品ページ、価格、販促の準備
  6. 販売を始め、改善を回す — 段階に合った指標で見直す

書類と審査の詳細は出店の流れと必要書類の記事で、公式規則にもとづいて整理しています。規制・費用・書類の情報は改定されることがあるため、検討する時点の公式規則・法令の原文で確かめるのが安全です。食品では2026年に、中国国内でリコールを担う受託企業の届出が求められるようになったように、制度の変更が出店後の運営に直結することもあります(食品規制の記事)。

よくある質問

Q1. 越境ECのデメリットは何ですか?

主なものは、規制やモール規則の変更への対応、物流・返品のコスト、為替の変動、現地の競合との価格競争です。中国向けの越境ECでは、買い手が個人で使う消費者に限られ、卸や店頭には回せないことも制約になります。重さは商品のカテゴリで大きく変わるので、向き不向きの判断軸で自社に当てはめて確かめてください。

Q2. 何から始めればよいですか?

市場調査やモール選びの前に、自社の商品が中国の規制とモールの規則で売れるか(ポジティブリスト・成分・出品規則)を確かめるところから始めてください。ここが不可なら、ほかの準備が無駄になります。可であれば、本記事の①〜⑥の順に決めていきます。

Q3. 越境ECと一般貿易は、どちらがよいですか?

商品と売り方によります。消費者に直接売り、商品ごとの登録を待たずに始めたいなら越境EC、中国の卸や店頭まで広げたい、または登録を取る体制があるなら一般貿易が候補です。判断の手順は決める②を見てください。

Q4. 始めるまでにどのくらいの期間がかかりますか?

当社のサービスページでは、出店から販売開始まで3〜6か月を目安としています。モール、商品の数、規制のあるカテゴリかどうかで前後します。売上が立ち上がるまでは、認知をつくる段階を含めて年単位で見てください。

Q5. 個人でも越境ECは始められますか?

可能です。ただし本記事で扱った大手モールへの出店には、法人や商標などの要件があります。個人の場合は、海外モールへの個人出品や購入代行型のサービスが現実的な入口です。

まとめ — 6つの判断のチェックリスト

社内で進み具合を確かめるためのチェックリストです。

判断決めること確認先
① 向き不向き規制への適合・中国での需要・価格の納得感向き不向きの判断軸
② ルート越境ECか一般貿易か(法的に売れるか・税の優遇・事業として合うか)ポジティブリスト・NMPAと越境EC
③ モール大手モール/軽量な販売枠/自社サイトプラットフォーム比較
④ 期間出店の作業〜3か月・認知3〜6か月・拡大6か月〜(販売開始までは3〜6か月が目安)期間の目安
⑤ 予算とやめる条件費用5項目+期間・上限・指標・判断日・やめる条件費用・税制
⑥ 体制社内に残す仕事と任せる仕事運営代行の選び方

どの判断で止まっているかが分かれば、誰に何を相談すればよいかもはっきりします。当社は中国向け越境ECの運営を19年支援しており、出店できるかどうかの調査(市場調査・出店可否レポート)から承っています。

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