越境ECの税金はいくらかかるのか — 中国の総合税・行郵税・一般貿易の違いと価格設計【2026年版】

中国越境ECの税金 総合税・行郵税・一般貿易の違いと価格設計

中国の越境EC(跨境電商小売輸入)で商品を販売する場合、限度額の範囲内であれば関税の税率は0%とされ、輸入時の増値税と消費税は法定納税額の70%で徴収されます。消費税のかからない商品なら実質的な負担は課税価格の約9.1%、消費税15%の対象になる高価格帯の化粧品なら約23.1%という水準です。これは一般貿易で輸入した場合の課税とは別建ての枠組みで、個人が郵便や宅配で受け取る場合の「行郵税」ともまた別のルートになります。この記事では、中国の財政部・海関総署・税務総局が公表している通知の原文をもとに、越境ECにかかる税の構造と、価格設計で押さえるべき点を整理します。出店にかかる保証金や年費などの出店費用は別の記事にまとめてあるため、ここでは輸入時の課税に絞ります。

まず全体像 — 中国への持ち込み方で課税が3つに分かれる

日本のメーカーから「中国では何%の税金がかかりますか」と聞かれることがよくあります。この問いには一つの答えがありません。同じ商品でも、どのルートで中国に入れるかによって、適用される法令そのものが変わるからです。

実務で関係するのは次の3つです。

ルートどういう入れ方か課税の建て付け
越境EC小売輸入天猫国際などのプラットフォーム経由で、保税区在庫または海外からの直送で個人に届ける関税0%、増値税・消費税は法定納税額の70%(限度額の範囲内)
個人の郵便・宅配個人が自分用に海外から郵送・宅配で取り寄せる総合税率表にもとづく簡易徴収(13%・20%・50%)
一般貿易輸入者が通常の貨物として輸入し、中国国内で販売する関税・増値税・消費税を全額課税

ブランドが越境ECで販売するときに関係するのは、原則として1つめです。2つめは個人の買い物のルートであって、企業が販売チャネルとして使うものではありません。3つめは中国国内の店舗や一般のECで売る段階の話になります。

この3つが混ざったまま議論されることが多く、「越境ECなら関税ゼロで売れる」「いや50%取られる」といった食い違いは、たいてい違うルートの数字を持ち寄っていることが原因です。まずは自社がどのルートの話をしているのかを確定させてください。

越境EC小売輸入の税 — 関税0%+増値税・消費税は法定額の70%

越境EC小売輸入の税制の本体は、2016年3月24日に財政部・海関総署・国家税務総局が公布した《関于跨境電子商務零售進口税収政策的通知》(財関税〔2016〕18号)です。同年4月8日から施行されています。

この通知は、越境ECで輸入される商品を「個人の荷物」ではなく「貨物」として扱ったうえで、限度額の範囲内であれば関税の税率を暫定的に0%とし、輸入時の増値税と消費税については免税枠を撤廃したうえで、法定納税額の70%で徴収する、という組み立てになっています(出典:財関税〔2016〕18号)。

ここから実際の負担を計算してみます。輸入時の増値税の標準税率は13%です(出典:財政部・税務総局・海関総署公告2019年第39号。2019年4月1日から、従来16%だった税率が13%に引き下げられました)。

商品の区分計算課税価格に対する負担
消費税がかからない商品
(健康食品・日用品など)
課税価格 × 13% × 70%約9.1%
消費税15%の対象になる化粧品課税価格 ×〔(13%+15%)÷(1−15%)〕× 70%約23.1%

たとえば課税価格500元の健康食品なら、500×13%×70%=45.5元。同じ500元でも消費税の対象になる化粧品なら約115元です。

ひとつ注意していただきたいのは、この「約9.1%」「約23.1%」という数字は、中国の当局が税率表として公表しているものではないという点です。通知が定めているのは「関税0%」と「法定納税額の70%」という徴収の方法であって、そこから法定税率を使って計算した結果がこの水準になる、という関係です。品目によって増値税の税率が異なる場合もあるため、自社商品については個別に確認してください。

消費税がかかるかどうかは、ブランドの格ではなく単価で決まる

化粧品の消費税については、2016年10月1日施行の《関于調整化粧品消費税政策的通知》(財税〔2016〕103号)で大きく変わりました。それまで「化粧品」という税目だったものが「高級化粧品」(原文の税目名は「高档化妆品」)に改称され、一般的な美容・メイクアップ用の化粧品への消費税は廃止されています。

そして「高級化粧品」の定義は、生産(輸入)段階の販売価格(課税価格)が、増値税を除いて10元/ミリリットル(グラム)または15元/枚以上のものとされ、税率は15%です(出典:財税〔2016〕103号)。

つまり判定基準は単価であって、ブランドの知名度や位置づけではありません。日本の化粧品は小容量・高単価の設計が多いため、「高級ブランドのつもりはない」商品がこの閾値を超えることがあります。価格を詰める前に、自社のSKUが単位あたりいくらになるかを一度計算しておくと、後からの想定違いを避けられます。

課税ベースは「送料・保険料込み」、納税義務者は購入者

税率と同じくらい見落とされやすいのが、何に対して課税されるのかという点です。財関税〔2016〕18号は、課税価格(原文の用語では「完税価格」)を実際の取引価格と定め、そこには商品の小売価格に加えて運賃と保険料を含むと明記しています(出典:財関税〔2016〕18号)。

商品本体の価格だけで税額を見積もると、実際の納税額とずれます。とくに直送モデルで国際送料が乗る場合や、送料無料をうたって価格に織り込んでいる場合は、課税ベースが想定より膨らみます。物流モデルによって送料の載り方が変わるため、保税区モデルと直送モデルの違いとあわせて考えたほうが実態に合います。

もう一点、同じ通知は納税義務者を「越境EC小売輸入商品を購入する個人」と定めています。法律上、税を納めるのはブランドではなく中国の消費者です。ただし実務では、その税額は販売価格に織り込まれたうえで消費者に提示されるのが通常です。「納税義務者は購入者だから自社の負担ではない」と考えると、粗利の計算を誤ります。

また、この通知が適用されるのは、税関と接続した電子商取引プラットフォームで取引され、取引・決済・物流の3つの情報を突き合わせられる(いわゆる三単照合ができる)商品です。プラットフォームを通さない販売がこの枠組みに乗らないのは、この要件があるためです。

限度額(1回5,000元・年間26,000元)を超えると何が起きるか

優遇された課税が適用されるのは、限度額の範囲内に限られます。この限度額は2018年11月29日公布の《関于完善跨境電子商務零售進口税収政策的通知》(財関税〔2018〕49号)で引き上げられ、2019年1月1日から適用されています。

原文では「越境EC小売輸入商品の1回あたりの取引限度額を人民元2,000元から5,000元に、年間の取引限度額を20,000元から26,000元に引き上げる」とされています(出典:財関税〔2018〕49号)。

区分限度額
1回の取引5,000元
1人あたり年間の累計26,000元

ここで誤解が生まれやすいので、はっきりさせておきます。この26,000元はブランドの販売上限ではなく、購入する個人ひとりに紐づく年間の枠です。年商の上限ではありません。

限度額を超えた場合の扱いも通知に書かれています。課税価格が1回あたりの限度額5,000元を超えていても、年間限度額26,000元を下回っていて、かつその注文の商品が1点だけであれば、越境ECのルートで輸入することはできます。ただしその場合は貨物の税率で関税・増値税・消費税が全額徴収されます(出典:財関税〔2018〕49号)。つまりチャネルは使えても、税の優遇は効きません。

実務上の意味はシンプルです。高単価品を1点で売る設計は、越境ECの税制上のうまみが消えるということです。セット販売や容量の刻み方を決めるとき、5,000元という線を意識しておくと、後から価格を組み替える手間が減ります。

あわせて同じ通知は、越境ECで輸入された商品は個人が自分で使用する目的に限られ、再販売してはならないと定めています。中国国内の小売店に卸したり、量販の目的でまとめて動かしたりする使い方は、この枠組みが想定しているものではありません。

個人の郵便・宅配(行郵税)は別ルート — 2024年12月に徴収規則が変わった

「中国は化粧品に50%の税金をかける」という話を聞いたことがあるかもしれません。この50%は越境ECの総合税ではなく、個人が郵便や宅配で受け取る物品にかかる、いわゆる行郵税の数字です。

この分野は2024年に整理されました。関税法にもとづく《進境物品関税、増値税、消費税徴収弁法》(輸入物品への関税・増値税・消費税の徴収規則)が、2024年12月1日から施行されています(第22条)。同規則は付表として《進境物品関税、増値税、消費税総合税率表》を定めており、税率は3区分です。

区分主な対象総合税率
類別1書籍・刊行物、情報技術製品、食品・飲料(アルコール飲料を除く)、金銀、家具、玩具、医薬品13%
類別2運動用品(ゴルフ用品を除く)、釣具、紡織品およびその製品、自転車、類別1・3に含まれないもの20%
類別3たばこ製品、アルコール飲料、貴重宝飾・宝石、ゴルフ用品、高級腕時計、高級化粧品、電池50%

この規則で実務上とくに重要なのは、「郵送・宅配物品」(原文の用語では「寄递物品」)の定義から越境EC小売輸入商品が明示的に除かれていることです。第20条は郵送・宅配物品を「個人が郵便または宅配便で送り、または受け取る、自分で使用するための物品であり、越境EC小売輸入商品を含まない」と定義しています(出典:《進境物品関税、増値税、消費税徴収弁法》第20条)。

条文でルートが切り分けられているため、天猫国際などで販売する商品にこの13%・20%・50%の表を当てはめるのは誤りです。日本語の解説記事では両者が混ざっていることがあるので、数字を引用するときは元がどちらの制度かを必ず確かめてください。

参考までに、同規則では総額2,000元以内の郵送・宅配物品(または2,000元を超える分割できない単品)が簡易徴収の対象とされ(第6条)、納付すべき税額が50元以内であれば免税で通関できます(第13条)。また、個人が自分で使う合理的な数量を超える物品は、輸入貨物として課税されます(第15条)。個人輸入の延長線上で商流を組もうとしても、数量が増えれば貨物扱いになるということです。

一般貿易と比べる — 税率だけで決めない理由

ここまでの整理だけを見ると、越境ECのほうが税負担は軽く見えます。実際、限度額の範囲内であれば関税は0%で、増値税・消費税も法定額の70%です。一般貿易では、これらが全額かかります。

ただし、ルートの選択を税率だけで決めると判断を誤ります。越境ECには税以外の制約がついてくるからです。

観点越境EC小売輸入一般貿易
輸入時の課税限度額内は関税0%、増値税・消費税は法定額の70%関税・増値税・消費税を全額
取引の上限購入者1人あたり1回5,000元・年間26,000元の枠がある枠の定めはない
販売の仕方個人が自分で使用する目的に限られ、再販売は認められない中国国内で通常の商流に乗せられる
対象商品越境EC小売輸入商品リストに掲載された品目に限られるリストによる限定はない
チャネル税関と接続したプラットフォーム経由で、三単照合ができることプラットフォームの要件はない

加えて、化粧品や健康食品では規制の側でも扱いが分かれます。越境ECの保税区モデルであれば、一般貿易で必要になる登録や届出が求められない場面がありますが、それは「規制がない」という意味ではありません。この点はNMPAの備案・注册と越境ECの関係で詳しく整理しています。

したがって現実的な進め方は、税率の比較ではなく段階の設計です。まず越境ECで需要と価格の納得感を確かめ、規模が見えてから一般貿易への移行を検討する、という順序が取りやすくなります。そもそも自社商品がこのルートに向いているかどうかは、越境ECのリスクと向き不向きの判断軸とあわせて考えてください。小さく試す方法としては天猫国際の探物のような選択肢もあります。

よくある質問

越境ECで中国に売ると、結局いくら税金がかかりますか。

限度額の範囲内であれば、関税は0%、増値税と消費税は法定納税額の70%で徴収されます。消費税がかからない商品で増値税13%が適用される場合、課税価格に対する負担は約9.1%です。消費税15%の対象となる化粧品では約23.1%になります。ただしこれは法定税率から計算した水準であり、当局が税率表として公表している数字ではありません。

年間26,000元というのは、自社の販売額の上限ですか。

いいえ。26,000元は購入する個人ひとりに紐づく年間の取引限度額で、ブランド側の販売額の上限ではありません。1回の取引には5,000元という別の限度額があります(財関税〔2018〕49号)。

1回5,000元を超える商品は越境ECで売れませんか。

売ること自体はできます。課税価格が5,000元を超えても、年間限度額26,000元を下回っていて、その注文の商品が1点だけであれば越境ECのルートで輸入できます。ただしその場合は貨物の税率で関税・増値税・消費税が全額徴収され、優遇は適用されません。

自社の化粧品は「高級化粧品」に当たりますか。

判定は単価で行われます。生産(輸入)段階の販売価格(課税価格)が、増値税を除いて10元/ミリリットル(グラム)または15元/枚以上であれば高級化粧品に該当し、消費税15%の対象になります(財税〔2016〕103号)。ブランドの位置づけではなく数値基準なので、SKUごとに計算して確認してください。

化粧品にかかると聞いた50%の税は何ですか。

個人が郵便や宅配で受け取る物品にかかる税で、越境EC小売輸入の税とは別の制度です。2024年12月1日施行の《進境物品関税、増値税、消費税徴収弁法》の総合税率表で、高級化粧品は50%の区分に置かれています。同規則は郵送・宅配物品の定義から越境EC小売輸入商品を明示的に除いているため、天猫国際などでの販売にこの税率を当てはめることはできません。

まとめ — 税は「率」ではなく「どのルートで入れるか」で決まる

中国の越境ECにかかる税は、単一の税率で表せるものではありません。押さえるべきは次の4点です。

第一に、越境EC小売輸入では限度額の範囲内で関税0%、増値税・消費税が法定額の70%となり、消費税のない商品なら約9.1%、消費税15%の化粧品なら約23.1%という水準になります。第二に、課税ベースは商品価格だけでなく送料と保険料を含みます。第三に、1回5,000元・年間26,000元という限度額は購入者ひとりの枠であり、超えると優遇が外れます。第四に、個人の郵便・宅配にかかる行郵税は条文上まったく別のルートで、13%・20%・50%という数字をそのまま持ち込むことはできません。

価格設計の実務では、税率そのものより「課税ベースに何が入るか」と「限度額のどちら側に自社の単価が来るか」のほうが効いてきます。SKUの容量と価格を決める段階でこの2つを確認しておくと、後から利益計算をやり直す事態を避けられます。

なお、ここで扱った税制と、出店時に必要な保証金・年費・技術サービス料はまったく別の費用です。両方をあわせた採算の見立てを作る際は、出店費用の記事と、規制全体を俯瞰する中国越境ECの法規制ガイドもあわせてご覧ください。税制は改定されることがあるため、実際の判断にあたっては、その時点の通知の原文を確認することをおすすめします。

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