中国越境EC規制・審査
【2026年最新】天猫国際の越境EC食品規制 — 中国国内「受託企業」の届出が必須に
この記事の要点
天猫国際で食品を売る店舗は、中国国内の受託企業を決めて届け出る必要があり、期限は過ぎています。
- 新ルール:中国国内で設立され独立した法人格を持つ食品経営企業を、受託企業として1社指定し届け出ます。
- 期限と措置:期限は2026年8月中旬に過ぎました。届け出ていない店舗は商品の取り下げなどを受けることがあります。
- 回収時の義務:通知を受けてから24時間以内に回収計画を天猫国際へ出します。費用は事業者側の負担です。
2026年、天猫国際(Tmall Global)で食品・健康食品を扱う越境EC事業者に関わる新しいルールが導入されました。要点は、中国国内に「リコール(回収)を担う受託企業」を決めて、天猫国際に届け出ることが求められるようになった、という点です。届出の期限は2026年8月中旬で、すでに過ぎています。届け出ていない店舗には、商品の取り下げや資金の凍結といった措置がとられることがあります。本記事では、何が変わり、越境EC事業者として何をすべきかを、天猫国際での販売に絞って整理します。一般貿易での輸入については本記事では扱いません。
何が変わったのか:回収を担う「受託企業」を中国国内に置く
回収を実際に担う中国国内の食品経営企業を1社決め、天猫国際に届け出ることが新たに加わりました。
今回の変化を一言でいえば、回収を実際に担う企業を中国国内に1社決め、天猫国際に届け出なければならなくなった、ということです。従来と今後を比べると、違いがはっきりします。
| 観点 | 従来 | 2026年の新ルール後 |
|---|---|---|
| 商品の扱い | 条件を満たす越境EC小売輸入の商品は「個人自用物品」として扱い、初回輸入の許可・注册・備案を求めない | 越境ECの枠組み自体は維持 |
| 中国国内の委託先 | 通関の申告を担う国内企業への委託は必要。回収の義務は事業者にあるが、回収を担う国内企業を決める手続きの定めはなかった | 回収を担う国内の「受託企業」を1社指定し、天猫国際に届け出る |
| 事業者の主な対応 | 品質・安全の責任、消費者への情報開示とリスク告知、返品対応、回収と賠償、税関への電子データ送信、保税区モデルでの品質の追跡体制など(486号) | + 国内受託企業の確保とリコール体制の整備 |
2018年の6省庁通知(商財発〔2018〕486号)は、ポジティブリストに載っていて個人が自分で使うためのものなど、決められた条件を満たして保税区モデルや海外直送で輸入される越境EC小売輸入の商品を「個人が自分用に輸入する物品」として扱い、初回輸入の許可・注册・備案を求めないとしています(重大な品質・安全上のリスクが出た商品などは例外)。また、商品に中国語ラベルがない場合があり、サイト上の中国語の電子ラベルで確認できることを、購入前に消費者へ告知するよう求めています。同じ通知は、通関の申告を担う中国国内の企業に委託することと、問題のある商品を事業者が回収することも定めていました。今回加わったのは、回収を担う受託企業として、中国国内で設立され独立した法人格を持つ食品経営企業を1社指定し、天猫国際に届け出ることです。天猫国際(Tmall Global)とはもあわせてご覧ください。
新ルールの中身:受託企業の要件と届出
受託企業は回収の実務を担える国内の食品経営企業に限られ、届出の期限は公布から90日以内で既に過ぎています。
このルールのもとになっているのは、中国の市場監管総局と商務部の連名の公告「越境EC小売輸入食品の回収監督の強化に関する公告」(2026年第1号。文書の日付は2026年1月7日、公表は2026年2月13日)です。この公告は、越境EC事業者に「国内の食品事業者1社に回収を委託し、その情報を越境ECプラットフォームに報告すること」を求めました。これを受けて天猫国際が2026年5月15日に公表した実施公告が、受託企業の条件や届出の方法、期限を決めています。越境EC事業者の視点で押さえるべきは、受託企業の条件・届出・リコール時の義務の3点です。
受託企業に求められる条件
受託企業には、名義を貸すだけでなく実際に回収の実務を担える国内の食品経営企業であることが求められます。天猫国際の実施公告は、次の条件を挙げています。
- 中国国内で適法に設立され、独立した法人格を持つ食品経営企業であること
- リコールの通知・情報報告・返品交換の調整・消費者対応を実行できる体制があること
- 規制当局および天猫国際の監督・確認を受け入れること
届出の手続きと期限
届出は、天猫国際の出店者向け管理画面の「合規管理-召回備案」(コンプライアンス管理-回収届出)から行います。提出する情報は次のとおりです。
| 提出するもの | 内容 |
|---|---|
| 企業名称 | 受託企業の正式名称 |
| 統一社会信用コード | 中国の法人番号にあたるもの |
| 法定代表者 | 受託企業の代表者 |
| 連絡先 | 担当者・連絡方法 |
| 授権委託書 | 双方の公印を押したもの |
期限は、実施公告の公布日(2026年5月15日)から90日以内です。日数で数えると2026年8月中旬にあたり、本記事を更新した2026年10月時点で、届出の期限はすでに過ぎています。天猫国際の規則ページでは、この実施公告は5月15日に掲載されたあと更新されておらず(2026年10月7日に確認)、期限の延長は書かれていません。まだ届け出ていない店舗は、未届出として扱われている前提で、受託企業の確保と届出を急ぐ必要があります。期限を過ぎた店舗に実際にどの措置がとられているかは、公開されている情報からは確認できていません(未確認)。
リコールが起きたときの義務
問題が起きたときの回収義務は、届出の有無にかかわらず事業者にあります。天猫国際の実施公告が求める対応を場面ごとに整理すると、次のようになります。
| 場面 | 求められる対応 |
|---|---|
| 問題の判明時 | ただちに販売を停止し、受託企業を通じて回収に着手 |
| 通知を受けてから24時間以内 | 回収計画(対象商品のSKU・ロット・数量、原因、消費者への通知方法と返品交換の案内、完了予定)を天猫国際へ提出 |
| 回収の実施中 | 店舗トップページに回収情報を掲示/影響を受けた消費者に連絡し、無償の返品・交換、または補償の案を示す |
| 回収・処理の際 | 回収と処理の状況を速やかに市場監管部門などに報告 |
| 費用 | 回収にかかる合理的な費用は越境EC事業者側が負担 |
物流面の体制づくりについては中国向け越境EC 物流ガイドもあわせてご参照ください。
なぜこの規制が生まれたのか
事業者が海外にいるため、問題のある食品を中国国内で回収する相手がはっきりしないという弱点を埋めるためです。
背景を理解しておくと、今後の運用を読むうえでも役立ちます。条件を満たす越境EC小売輸入の商品は「個人自用物品」として扱われ、初回輸入の許可・注册・備案を求められない(重大な品質・安全上のリスクが出た商品などは例外)一方、販売している事業者は海外にいます。2018年の通知でも事業者に回収の義務はありましたが、問題のある食品が出回ったときに、中国国内で回収や消費者対応を担う相手がはっきりしない、という弱点がありました。
市場監管総局・商務部の公告は、食品安全の監督を全体の流れで強めるという党中央・国務院の方針を受けたもので、国内の回収の担い手を決めることを切り口に、越境EC事業者・受託企業・プラットフォームそれぞれの責任を固めるものと説明されています(上海の法律事務所・錦天城2が市場監管総局の発表として紹介)。今回のルールは、越境ECの仕組みは残しつつ、品質・安全上のリスクが見つかった段階で回収に動ける担い手を中国国内に確保させ、越境EC事業者・受託企業・プラットフォームそれぞれの責任を強めるものと読めます。「海外ブランド」「原装進口」の表示が本当かという論点は越境ECで問われる“出所”の透明性、中国EC全般の法規制は中国EC 法規制・コンプライアンスでも整理しています。
越境EC事業者への影響と、いま考えるべきこと
健康食品も対象と考えて準備し、未届出なら商品の取り下げや資金の凍結もあり得るため受託先の確保を急ぎます。
では、実際に天猫国際で食品を扱う事業者は何を考えればよいのでしょうか。影響の大きさと、対応の勘所を整理します。
健康食品も対象と考えて準備する
天猫国際の実施公告は、対象を「食品類の商品を販売するすべての境外商家」としています。日本で健康食品・サプリメントと呼ばれる商品は、中国の法律上の「保健食品」にあたるものと、普通の食品にあたるものがあります。保健食品は、中国の食品安全法3では乳幼児用調製粉乳などと並ぶ「特殊食品」に位置づけられており、どちらであっても食品です。健康食品を扱う店舗も対象になると考えて準備し、自社商品の天猫国際での販売カテゴリを確認しておくのが安全です。
届け出ていない店舗にとられうる措置
実施公告は、回収の義務を果たさない、欠陥の情報を隠す、受託企業を届け出ない、といった店舗に対して、商品の取り下げ、店舗の減点、資金の凍結、越境取引の権限の停止をとれると書いています。情状が重い場合は中国の海関総署(税関)に通報し、越境EC業務そのものを止めるよう求めるとしています。措置が食品の商品だけに及ぶのか、店舗全体に及ぶのかは、この公告だけでは確認できません。
対応の鍵は「実際に動ける中国国内パートナー」
対応の中心は、名義だけでなく実際にリコール対応を担える中国国内の食品事業者を確保し、適切な委託契約を結べるかどうかです。自社グループや取引先に条件を満たす中国法人があるか、無い場合はどう手当てするかを、すぐに確かめる必要があります。自社に条件を満たす中国法人がない場合は、受託先を外部で探して契約を結ぶところから始めることになります。
厳しくなったが、見方を変えれば「先行者の優位」にもなり得る
回収体制まで整えた事業者には競合への優位になり得ますが、運用の細部は後から変わるため追い続ける必要があります。
規制の強化は、短期的には参入障壁の上昇であり、運用負担の増加でもあります。しかし、対応のハードルが上がるということは、裏を返せば、きちんと体制を整えた事業者にとっては、簡単には追随できない競合に対する優位にもなり得ます。回収体制まで含めて整えておけば、取引先やモールに対して、きちんと運営していることを説明する材料にもなります。規制対応を「コスト」とだけ捉えず、信頼の裏付けとして使う発想もあってよいと当社は考えています。
一方で、正直に申し添えておきたいのは、中国の規制は運用の細部が後から固まったり、解釈が変わったりすることが少なくない、という点です。今回のルールも、施行後の運用次第で、求められる対応が変化する可能性があります。確定したかに見える情報も鵜呑みにせず、最新の公告と実際の運用を継続的に追うこと、そして変化に合わせて柔軟に体制を見直すことが欠かせません。
まとめ
2026年の越境EC食品の新ルールは、「中国国内に回収を担う受託企業を置き、天猫国際に届け出る」ことを軸とした変化です。届出の期限(実施公告の公布から90日以内)は2026年8月中旬に過ぎています。まだ届け出ていない場合は、受託企業の確保と届出を最優先で進め、あわせて、回収が必要になったときに果たすべき義務を受託企業と確認しておく必要があります。通知を受けてから24時間以内に回収計画を天猫国際へ出すことは、越境EC事業者と受託企業の双方に課された義務です。店舗トップでの告知や、消費者への返品・交換または補償の提示も求められます。健康食品を扱う事業者も対象と考えて準備してください。
こうした規制対応は、商品の販売だけに集中したい事業者にとっては負担の大きい領域です。エフカフェでは、天猫国際への出店から日々の運営、そして今回のような規制変更への対応まで、日本語でご相談いただける体制を整えています。「自社だけで対応しきれるか不安」という段階でも、まずは現状の整理からお手伝いできます。
受託企業の候補がない場合の探し方や届出の進め方を、当社が現状の整理からお手伝いします。
サービス詳細・無料相談はこちら →※本記事は、市場監管総局・商務部の公告 2026年第1号(2026年1月7日付・2月13日公表。samr.gov.cn4)、天猫国際が2026年5月15日に公表した実施公告(rule.tmall.hk1)、商務部など6省庁の通知 商財発〔2018〕486号(gov.cn5)にもとづき、2026年10月7日時点の内容に更新しています。手続きの詳細・対象範囲は今後の運用で変わることがあるため、最新の公式情報をあわせてご確認ください。