自社ブランドを中国で誰が売れるのか — 天猫国際の「授権」で販売者を絞り込む仕組み【2026年9月改定】

自社ブランドを中国で誰が売れるのか — 天猫国際の授権で販売者を絞り込む仕組み

中国のECで自社ブランドを誰が売れるかは、商標権だけで決まるわけではありません。天猫国際(Tmall Global)には、ブランドの商標権者を出発点とする「授権」の連鎖を何段まで認めるかという規則があり、業種や店舗タイプごとに上限が決められています。つまりブランド側が授権を出すか出さないかが、そのまま売り手の顔ぶれに効いてきます。

2026年8月27日、天猫国際は《天猫国际商家资质标准》(商家資質標準)の更新通知を公示しました。医薬・医療関連のいくつかの類目で、指定されたブランドを扱う店舗にはブランド側からの授権書の提示を求める、という内容です。施行は2026年9月3日。名前が挙がっているブランドには日本の製薬会社のものが多く含まれています。この記事では、その通知を入り口に、天猫国際でブランドが持っている「誰に売らせるか」の統制の仕組みを、規則の原文にあたって整理します。

2026年9月3日から、天猫国際で何が変わるのか

今回の通知が求めているのは、指定された類目で指定されたブランドを扱う専営店・卖场に対して、ブランド側が発行した授権書を出すことです。授権書は、ブランドから出店企業へ直接出された一級授権か、あいだに一社挟まる二級授権のいずれか。二級授権を使う場合は、一級授権書のほうに転授権を認める旨が明記されている必要があります(出典:天猫国際《商家資質標準》更新通知、ruleId 20010687)。

対象として挙げられている経営類目は、成人用品・情趣用品、医療器械、コンタクトレンズ・ケア液、OTC医薬品・国際医薬(その他の国際薬品類目は別途要件)、インターネット医療・保健用品、計生用品の6つです。通知が名指ししている店舗タイプは専営店と卖场で、旗艦店や専売店については触れられていません。ただし他の店舗タイプへの影響を否定する文言があるわけでもないので、自社の店舗タイプが該当するかは規則本文と担当者の案内で確かめてください。

ブランドは原文に17件が並び、末尾は「等品牌」で締められています。つまり限定列挙ではなく、例示です。並んでいるのは muhi/无比滴、EVE(医薬)、第一三共、科达制药、sinsinpas、盐野义、顺天堂、LOXONIN/乐松、Kracie、LABORATORIOS VINAS/碧力亚丝、SINSIN PHARM、港香兰、和汉笺、MELATONING、Heel/希宜乐、densmore、MELANOSA。規則本文には、なぜこの並びになったのかの説明はありません。通知が目的として書いているのは「天猫国際の医薬ブランドの正規品としての認知を守るため」という一文だけです。

これは出店の話ではなく、ブランド側の話です

授権書は、日本語で書かれた天猫国際の解説記事にもよく出てきます。ただしそのほとんどは、出店を検討している企業に向けて「出店時に必要な書類のひとつ」として説明したものです。授権を受け取る側から見た説明といっていいでしょう。

一方で今回の通知は、授権を出す側から読むと意味が変わります。ブランドが授権を出さなければ、その店は9月3日以降、対象類目でそのブランドを扱えなくなる。逆にいえば、ブランドがどこに授権を出すかという判断が、中国のモール上での売り手の顔ぶれに直接効くということです。

これは、まだ中国に自社で出店していないメーカーにとってこそ重要な話です。「うちはまだ中国に出していないのに、なぜか天猫や淘宝に自社商品が並んでいる」という状態は珍しくありません。その並んでいる店が正規の授権を持っているのか、それとも誰からも授権を受けていないのか。この区別を自社で把握できていないと、打ち手が決められません。

天猫国際の「授権」はどういう仕組みか

天猫国際の《商家資質標準》は、授権を「級数」で数えます。定義は規則本文にそのまま書かれています。商標権者が出店企業へ直接授権すれば一級。商標権者が誰かに授権し、その誰かがさらに出店企業へ授権すれば二級。規則の例示をそのまま引くと、A が商標権者、C が出店企業で、C が出す授権が A→B→C の形をとるとき、これは2級です(出典:天猫国際《商家資質標準》ruleId 11000442、最終公示2026年5月21日・施行2026年5月27日)。

ここで大事なのは、授権の出発点が必ず商標権者に置かれていることです。途中に商社や代理店が何社挟まってもかまわないけれど、たどっていくと必ずブランドに行き着かなければならない。そのうえで「何段まで認めるか」を業種ごとに切っています。段数を絞れば絞るほど、ブランドから遠い事業者は締め出されていく構造です。

経営大類専営店に求められる授権級数(規則本文より)
食品商標権者を出発点とする四級以内の完全な授権、または仕入証憑
美妆(化粧品)商標権者を出発点とする三級以内の授権または仕入証憑。あわせて3ブランド以上を扱うこと、開店主体の設立から1年以上経っていることが求められる
デジタル・家電商標権者を出発点とする四級以内の完全な授権、または仕入証憑

店舗タイプによっても要求は変わります。品牌旗艦店で開店企業が商標権者本人でない場合は、商標権者が出す独占授権書。専売店は商標権者が出す授権書。卖场型旗艦店は四級以内の完全な授権または仕入証憑。専営店は業種ごとの級数要件に従う、という組み立てです。出店側から見た手続きや必要書類の全体像は天猫国際の出店の流れと必要書類にまとめてあるので、申請の実務はそちらを参照してください。

今回の9月3日施行の通知は、この枠組みに医薬関連の類目だけ追加の条件を重ねたものと読めます。専営店に求められる級数を、対象ブランドについては一級か二級までに絞り込んだ、ということです。

「偽物が売られている」と「本物が正規外で売られている」は別の問題

中国のECで自社商品を見つけたときの対応として広く知られているのは、証拠を保全してプラットフォームに削除を申し立て、必要なら中国での商標を押さえる、という道筋です。これは偽物、つまり模倣品に対する打ち手であり、知的財産権を根拠にしています。

ところが実務で困るのは、しばしばその手前です。並んでいるのが本物で、どこかの正規の流通から仕入れられたものだった場合、模倣品としては扱えません。真正な商品の転売がどこまで商標権の問題になるかは中国法の解釈にも幅があり、ここで断定することは避けます。ただ少なくとも、模倣品の削除申請と同じ道具立てでそのまま処理できる話ではない、とはいえます。

そこでもう一本の道具として意味を持つのが、今回見てきたプラットフォームの授権ルールです。こちらは知的財産権の侵害を立証する話ではなく、プラットフォームが定める出店資格の話です。対象の類目でブランド側の授権を出せない店は、その類目でそのブランドを扱えない。ブランドが授権を出すかどうかという契約の判断が、そのまま資格の可否に反映されます。

この2つは目的も根拠も違うので、どちらか一方で足りるものではありません。ただ、自社が直面しているのがどちらの問題なのかを切り分けないまま「まず弁護士に相談」に進むと、時間もコストもかかるわりに状況が動かないことがあります。まず、並んでいるのは本物か偽物か。本物なら、その店はどこから仕入れたのか。そこを確かめるのが先です。ブランドの出所表示が中国市場でどう受け取られているかという背景については、「海外ブランド」「原装進口」はどこまで本当かもあわせてどうぞ。

ブランド側が先に決めておく3つのこと

ひとつめは、現状の棚卸しです。天猫国際・天猫・淘宝で自社ブランド名を検索し、どの店が何を売っているかを一覧にします。そのうえで、それぞれの店に対して自社が授権を出しているか、出しているとすれば何級の連鎖になっているかを突き合わせます。ここで「自社が授権を出した覚えのない店」が出てくるなら、仕入元をたどる必要があります。

ふたつめは、授権方針を決めることです。誰にも出さないのか、特定の1社に絞るのか、複数に出すのか。転授権を認めるのか認めないのか。今回の通知が二級授権について「一級授権書に転授権を明確に許可する旨が必要」としているように、転授権を認めるかどうかは授権書の書き方の問題として現れます。ここを決めずに求められるまま授権書を出していると、あとから連鎖が想定外に伸びます。

みっつめは、正規の入口を用意するかどうかの判断です。正規外の販売を減らしたいなら、消費者から見て「ここが公式」と分かる場所が中国側に要ります。自社で旗艦店を持つのか、信頼できる1社に授権して運営してもらうのか。運営を任せる場合の見極め方は天猫国際のTP(運営代行パートナー)の選び方に整理しています。また、天猫国際の審査そのものがここ数年で厳しくなっている流れは越境ECの出店審査はなぜ厳しくなったのかで扱っています。制度全体の見取り図が必要なら天猫国際(Tmall Global)とは中国EC 法規制・コンプライアンスから入るのが早いはずです。

なお、天猫国際は招商業務をいかなる代理機関にも授権していないと招商標準に明記しています。「特別な枠がある」という話が持ち込まれたときは、まずそこを疑ってください。

よくある質問

天猫国際の授権書とは何ですか?

ブランドの商標権者が、特定の企業に対して自社ブランド商品の販売を認めることを示す書面です。天猫国際では、出店企業が商標権者本人でない場合に提出が求められます。商標権者から出店企業までの授権のつながりは「級数」で数えられ、業種や店舗タイプごとに何級まで認められるかが決まっています。

2026年9月3日から具体的に何が必要になりますか?

成人用品・情趣用品、医療器械、コンタクトレンズ・ケア液、OTC医薬品・国際医薬、インターネット医療・保健用品、計生用品の各類目で、通知に挙げられたブランドを扱う専営店・卖场は、ブランド側が開店主体に出した一級授権または二級授権を提示する必要があります。二級授権の場合は、一級授権書に転授権を認める旨が明記されていることが条件です(出典:天猫国際《商家資質標準》更新通知、ruleId 20010687)。

通知に挙がっている17ブランド以外は関係ありませんか?

通知の列挙は末尾が「等品牌」で締められており、限定列挙ではありません。したがって挙がっていないブランドが対象外だと読むことはできません。また授権級数の要件自体は、医薬関連に限らず食品・美妆などの各業種で以前から《商家資質標準》に定められています。

中国で商標を取っていなくても授権で販売者を絞れますか?

天猫国際の《商家資質標準》は、授権の出発点を商標権者に置いています。したがって権利の所在をどう証明できるかが前提になります。中国での商標をどう扱うかは知的財産の専門家の領域なので、自社の出願・登録の状況を確認したうえで相談することをおすすめします。

自社商品が中国のECで売られているのを見つけたら、まず何をすべきですか?

並んでいるのが模倣品なのか、正規に流通した本物なのかを先に切り分けてください。打ち手が変わります。模倣品であれば知的財産権を根拠とした対応、本物であれば仕入元をたどったうえで授権方針をどうするかという判断になります。いずれの場合も、商品ページのURL・販売者情報・価格を日時が分かる形で記録しておくと後の判断が早くなります。

まとめ

2026年9月3日施行の通知は、対象こそ医薬関連の類目に限られていますが、天猫国際が持っている統制の仕組みそのものは以前から動いています。商標権者を出発点とする授権の連鎖を何段まで認めるか。その設定を通じて、プラットフォームは売り手とブランドの距離を管理しています。

ここから読み取れるのは、中国のモールで自社ブランドを誰が売るかという問いに、ブランド側から手をかけられる余地があるということです。中国に出店していない段階でも、授権を出すか出さないかという判断はできます。まずは自社ブランドが今どこで売られているのかを一覧にするところから始めてください。

なお、規則は随時改定されます。この記事に挙げた要件も、検討の時点で天猫国際の規則原文にあたって確認してください。

中国越境ECのコラム・ニュース一覧を見る →

TOPICS一覧へ

お問い合わせ・ご相談

エフカフェのサービスに関する
お問い合わせやご相談はこちらから。

採用情報

募集職種・募集要項等
採用の情報はこちらから。