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中国で使えない化粧品成分はどう調べるのか — 越境ECと一般貿易で違う「成分の壁」と、自社処方を確認する手順

中国で使えない化粧品成分はどう調べるのか — 越境ECと一般貿易で違う「成分の壁」と、自社処方を確認する手順

中国で自社の化粧品が売れるかどうかを成分の面から確かめる作業は、「禁止成分の一覧」を眺めることではありません。中国では、国内で流通した化粧品にすでに使われている原料が《已使用化粧品原料目録》として公表されており、判定は製品単位ではなく原料名(中文名称またはINCI名称)単位でこの目録を引くことから始まります。目録に無い原料は「化粧品新原料」として登録または届出の対象になり(《化粧品監督管理条例》第11条)、逆に目録に載っていても、備考欄で禁止・制限の管理が上に来る場合があります

この記事では、化粧品メーカーの海外事業・EC担当者が、外部に調査を依頼する前に社内で当たりを付けられるように、公的な照会ページで全成分を引く手順と、そこに実際に表示される文言の読み方を整理します。あわせて、越境EC(保税区・直送)と一般貿易で成分の壁がどう違って効くのかも切り分けます。

結論:使える成分かどうかは「已使用化粧品原料目録」を引いて確かめる

中国では《已使用化粧品原料目録(2021年版)》が公表されています(出典:国家薬品監督管理局 公告2021年第62号、2021年4月27日発布・2021年5月1日施行。2015年版の目録名称を改訂したもの)。この目録は中国食品薬品検定研究院(中検院)の照会ページで、序号・中文名称・INCI名称/英文名称から検索できます。

目録は2つに分かれています。目録Ⅰは「中国国内で生産・販売された化粧品に使われている原料の客観的な収録」と説明されており、目録Ⅱは「中国国内で登録または届出され、安全監測期間が満了して目録に組み入れる条件を満たした化粧品新原料」の収録です(出典:中検院《已使用化粧品原料目録》Ⅰ・Ⅱの説明)。当社が2026年8月24日に照会した時点で、目録Ⅰの表示件数は8,986件、目録Ⅱは10件でした。

ここで押さえておきたいのは、この目録が「許可リスト」ではなく「すでに使われた実績の収録」だという点です。目録Ⅰの説明では、収録された原料を選ぶ場合も「国の関係法令・強制性国家標準・技術規範の関連要求に適合し、製品の品質安全の主体責任を負う」ことが求められると明記されています。目録で名前が見つかったことは、そのまま使ってよいという意味にはなりません。

前提:越境ECと一般貿易で「成分の壁」の効き方は違う

成分の話に入る前に、どのルートで売るのかを決めておく必要があります。ルートによって、成分がどこで効いてくるかが変わるからです。

《化粧品監督管理条例》は第2条で「中華人民共和国の境内において化粧品の生産経営活動およびその監督管理に従事する場合は、本条例を遵守しなければならない」と定めています。一方、越境EC小売輸入については《商務部等六部門による越境電子商務小売輸入の監督管理に関する通知》(商財発〔2018〕486号、2019年1月1日施行)第3条が「越境EC小売輸入商品は個人自用の進境物品として監管し、当該商品の初回輸入許可批件・登録または届出の要求を執行しない」と定めています。つまり、越境ECで売る限り、日本の製品をそのまま出すために中国側で登録や届出を取る必要はありません(この仕組みの詳細は化粧品・健康食品のNMPA・規制実務で扱っています)。

ルート成分に関する登録・届出それでも成分が効いてくる場面
越境EC小売輸入
(保税区・直送)
登録・届出は執行されない(商財発〔2018〕486号 第3条) プラットフォーム側の出品禁止/中国国内での表示・広告の規制/将来一般貿易に移る段階での再判定
一般貿易 普通化粧品は届出、特殊化粧品は登録が必要(《化粧品監督管理条例》)。目録に無い原料は新原料として登録または届出(同 第11条) 処方そのものが審査の対象になる。目録・技術規範が正面から効く

越境ECでの「免除」を「成分は関係ない」と読むのは危険です。プラットフォームは独自に出品を禁止できます。実際に天猫国際では、2026年の商家規則でエクソソーム(外泌体)を含む商品の出品が禁止されています(天猫国際がエクソソームを販売禁止に)。また、越境ECで需要を確かめてから一般貿易に移すという段階設計を取る場合、その移行時点で目録と技術規範が正面から効いてきます。成分の確認は、越境ECで始めるとしても先送りにしないほうが安全です。

自社の処方を自分で調べる4ステップ

実際の作業は、次の4段階です。特別なツールは要りません。

ステップやること見るもの・判断
1. 全成分を並べる 日本の全成分表示ではなくINCI名称でリスト化する。植物エキスは学名と使用部位まで書き出す 日本語の表示名だけでは照会できない。ここが雑だと以降がすべて空振りする
2. 目録Ⅰを引く 中検院の照会ページ(目録Ⅰ)でINCI名称または中文名称を1件ずつ検索する ヒットすれば「すでに中国で使われた実績がある原料」。ヒットしなければステップ4へ
3. 備考欄を読む ヒットした行の「备注(備考)」列を必ず見る 禁止・制限の管理が上に来る場合がある(次章)。ここを飛ばすと判定が逆になる
4. 目録Ⅱと新原料を確認 目録Ⅰに無ければ目録Ⅱも引く。それでも無ければ新原料の可能性として扱う 目録Ⅱは使用目的と安全使用量(使用範囲・上限量)つきで収録されている

目録Ⅰで検索できる項目は序号・中文名称・INCI名称/英文名称の3つだけです。CAS番号では引けないため、手元の処方をINCI名称に揃えておく作業(ステップ1)が実務上いちばん時間を食います。逆に言えば、ここが揃っていれば以降は機械的に進みます。

目録Ⅱは列の構成が目録Ⅰと違い、CAS番号・分子式・使用目的・安全使用量まで載っています。たとえばN-アセチルノイラミン酸(CAS 131-48-6)は使用目的が「保湿剤」、安全使用量が「各種化粧品(口唇用および吸入暴露リスクのある製品を除く)2%」と記載されています(出典:中検院《已使用化粧品原料目録》Ⅱ、2026年8月24日照会)。目録Ⅱでヒットした原料は、上限量と使用範囲まで一致しているかを確認する必要があります。

目録に載っていても使えないことがある — 備考欄の読み方

ここがこの作業でもっとも誤解されやすい部分です。目録Ⅰの説明には、次のように書かれています。

「本目録に収録された原料が化粧品の禁用原料・限用原料または准用原料として管理されている場合、化粧品の登録人・届出人は、強制性国家標準・技術規範の規定に従って当該原料の使用を選択しなければならない」(出典:中検院《已使用化粧品原料目録》Ⅰ 説明二)。

つまり、目録の収録と、禁止・制限の規定は別のレイヤーで、後者が優先します。この関係は照会画面でそのまま確認できます。2026年8月24日時点の目録Ⅰでは、備考欄に次の3種類の文言が現れます。

備考欄の表示意味実際に確認できる例
「/」(記載なし) 備考としての特記事項がない 序号00002 1,10-デカンジオール(1,10-DECANEDIOL)
「按照《化妆品安全技术规范》要求使用」 《化粧品安全技術規範》の要求に従って使用する(=制限つき) 序号00010 1,5-ナフタレンジオール、序号00016 1-ナフトール
「《化妆品安全技术规范》禁用原料」 《化粧品安全技術規範》の禁用原料である 序号00021 2,4-ジアミノフェノール、序号00022 2,4-ジアミノフェノール塩酸塩

目録に序号を持って収録されていながら、備考欄に「禁用原料」と書かれている行が実在します。過去に使われた実績を客観的に収録するという目録の性格上、こうした行が残るためです。「目録で見つかったから大丈夫」と社内に報告してしまうと、この行を拾えません。

なお禁用原料そのものは、《化粧品安全技術規範(2015年版)》の禁用組分の表を改訂した《化粧品禁用原料目録》《化粧品禁用植(動)物原料目録》として整理されています(出典:国家薬品監督管理局 公告2021年第74号)。備考欄が指しているのはこの体系です。当社が確認した時点ではこの公告の本文ページを開けなかったため、収載件数についてはここでは触れません。件数よりも、自社の処方に含まれる原料の備考欄がどう書かれているかのほうが判断に直結します。

日本の処方が詰まりやすい3つの落とし穴

日本の全成分表示をそのまま持ち込むと、多くの場合この3つで止まります。いずれも目録Ⅰの説明に書かれている要求です。

1. 植物エキスは「種」だけでなく「使用部位」まで必要

目録Ⅰの説明四では、原料名称が「某某植物提取物(○○植物エキス)」の形式である場合は原則としてその植物の全株およびその抽出物が已使用原料であることを示すとしつつ、「使用時にはその具体的な部位を注記しなければならない」と定めています。「某某植物花/葉/茎提取物」の形式であれば、原則として地上部分およびその抽出物を指し、この場合も具体的な部位の注記が必要です。

日本の表示は「○○エキス」で完結していることが多く、根なのか葉なのか花なのかが処方書に残っていないことがあります。照会の前に、部位が特定できる資料を原料メーカーから取り直すところから始まるケースは珍しくありません。

2. 「*」が付いた原料は総称 — 使用実績の証明材料が要る

目録Ⅰの説明五では、中文名称欄に「*」が付いた原料はある類別の原料の総称であるとされ、使用時には具体的な原料の名称を注記し、その具体的な原料が目録に収載されていない場合は「当該具体原料が中国で登録または届出された製品に使用されていることの証明材料」を提供しなければならないとされています。証明材料の例として、原料メーカーが発行する当該原料の説明書と企業の購買証憑、その原料を使用した製品の登録・届出情報、処方および生産投入記録などが挙げられています。

説明六では「**」が付いた原料について、名称の表現が規範的でなく動植物の基原が不明確なものであるとされ、規範的な具体名称を明記したうえで同様の証明材料を提供するよう求めています。総称でヒットしたことを「収載済み」と読むと、後で証明材料の宿題が出てきます。

3. 名称の揺れ — 「曾用名」を使わない

目録Ⅰの説明七では、一つの序号に二つの名称が並んでいる場合は同一の原料を指すとされ、使用時にはINCIに収載された名称、または中文名称の命名原則に沿って命名された植物原料名称を選ぶこととされています。「曾用名(旧称)」と注記された名称の使用は推奨されていません。社内の処方書が古い名称で書かれている場合、この読み替えが必要です。

この3点はいずれも、成分が使えるか否かという可否の話ではなく、「照会するための情報が社内に揃っているか」という話です。中国側の規制に不適合だから止まるのではなく、自社の処方情報の粒度が足りずに判定できないという形で止まります。参入の可否をどこで見極めるかについては越境ECのリスクと向き不向きでも整理しています。

目録になかったら「新原料」— 注册と備案の分かれ目

目録Ⅰ・Ⅱのいずれにも無い原料は、中国で初めて化粧品に使う原料、すなわち「化粧品新原料」に当たる可能性があります。《化粧品監督管理条例》第11条は次のように定めています。

「中国境内において化粧品に初めて使用する天然または人工の原料を化粧品新原料とする。防腐・日焼け止め・着色・染毛・シミ取り美白の機能を有する化粧品新原料は、国務院薬品監督管理部門の登録(注册)を経てはじめて使用できる。その他の化粧品新原料は、使用前に国務院薬品監督管理部門に届出(備案)しなければならない」(出典:《化粧品監督管理条例》第11条)。

また第14条では、登録・届出を経た化粧品新原料が使用に投入されたあと3年以内は、新原料の登録人・届出人が毎年、当該新原料の使用および安全の状況を報告しなければならないとされています。目録Ⅱがこの安全監測期間を満了した新原料の収録だという説明と対応しています。

新原料の登録・届出に必要な資料の規定は、2026年に置き換わりました。《化粧品新原料注册備案及資料管理規定》が2026年6月25日に公布され、2026年7月15日から施行されています。同時に、それまでの《化粧品新原料注册備案資料管理規定》(2021年第31号公告)は廃止されました(出典:国家薬品監督管理局 公告2026年第59号)。規定の本文は公告の添付文書に収録されており、当社は本記事の作成時点で本文を確認できていないため、内容の詳細についてはここでは触れません。新原料の線に入る場合は、この2026年版の規定に基づいて専門機関に確認することをおすすめします。

実務的には、新原料の登録・届出が必要だという結論になった時点で、その処方をそのまま一般貿易で売る計画は組み直しになります。越境ECで先に需要を確かめる、あるいは中国向けに処方を差し替えるという判断が現実的な選択肢になります。

目録は動く — 調べた日付を残す

この目録は固定されたものではなく、継続的に調整されています。中検院の《已使用化粧品原料目録》のページには「調整説明」が掲載されており、当社が2026年8月24日に確認した時点では、2025年6月23日・2025年10月20日・2026年1月4日・2026年4月13日・2026年8月19日の5本が並んでいました。年に2〜3回のペースで更新されている状況です。

したがって、社内で成分の判定結果を残すときは、可否だけでなく「いつ照会したか」をセットで記録しておくほうが安全です。参入の検討に半年、一年かかることは普通にあり、その間に目録側が動きます。最終の意思決定の前にもう一度引き直す、という運用にしておくと、古い判定を根拠に進めてしまう事故を避けられます。

成分以外の規制についても同じことが言えます。一般貿易側では輸入化粧品の検査検疫のルールが2026年12月に切り替わりますし(中国の輸入化粧品 検査検疫ルール刷新)、中国EC全体の法規制は継続的に更新されています(中国EC 法規制・コンプライアンス)。

よくある質問

越境ECなら中国の化粧品成分規制は関係ないのですか?

登録・届出という形では関係しません。越境EC小売輸入は個人自用の進境物品として扱われ、初回輸入許可批件・登録・届出の要求は執行されないと定められています(商財発〔2018〕486号 第3条)。ただし、プラットフォームが独自に出品を禁止する成分があり、中国国内での表示や広告には別途規制がかかります。一般貿易に移る段階では成分の審査が正面から効いてくるため、「関係ない」と考えて処方の確認を省くのは推奨できません。

「已使用化粧品原料目録」に載っていれば、その成分は使ってよいということですか?

いいえ。目録Ⅰの説明では、収録された原料が禁用原料・限用原料または准用原料として管理されている場合は、強制性国家標準・技術規範の規定に従って使用を選択しなければならないとされています。実際に、備考欄に「《化粧品安全技術規範》禁用原料」と記載された行が目録内に存在します。目録でヒットしたら、必ず備考欄まで読む必要があります。

成分の照会はどこでできますか。有料ですか?

中国食品薬品検定研究院(中検院)が《已使用化粧品原料目録》の照会ページを公開しており、序号・中文名称・INCI名称/英文名称で検索できます。閲覧そのものに費用はかかりません。ただし、ヒットしなかった原料の扱いや、部位・総称原料の証明材料の要否といった判断には専門的な確認が必要になる場面があります。

目録に無い原料が1つ見つかったら、参入は諦めるべきですか?

いいえ。まず、その原料が製品の訴求に不可欠かどうかを切り分けます。処方上の役割が代替可能であれば、中国向けに差し替える判断ができます。不可欠であれば、越境ECで先に需要を確かめてから新原料の登録・届出を検討する段階設計が現実的です。目録に無いことが分かった時点で選択肢が整理できる、という意味で、この確認は早いほど有利です。

化粧品と健康食品では、確認する内容は同じですか?

異なります。化粧品はここで説明した原料目録と技術規範の体系ですが、健康食品は保健食品の登録・届出(いわゆる藍帽子)という別の体系になり、越境ECでの機能性の訴求にも制約があります。分岐の全体像は化粧品・健康食品のNMPA・規制実務で扱っています。天猫国際そのものの仕組みは天猫国際(Tmall Global)とはをご覧ください。

まとめ

中国の化粧品成分規制について調べようとすると、制度の解説にはすぐ行き当たりますが、「自社のこの処方はどうなのか」という問いには誰も答えてくれません。実際の判定は、全成分をINCI名称に揃え、公開されている《已使用化粧品原料目録》を1件ずつ引き、備考欄まで読むという地道な作業です。

この作業を先にやっておくと、参入の検討がぶれなくなります。目録に無い原料が見つかれば新原料の線として扱い、備考欄に制限があれば配合量の設計に落とし、部位や総称原料の情報が欠けていれば原料メーカーに取り直す。どれも、外部に調査を依頼する前に社内で当たりを付けられる範囲です。

当社では、中国越境ECの参入検討にあたって、規制面の確認と市場性の見極めを合わせて支援しています。処方や商材の性質によって、越境ECから始めるべきか、そもそも別のルートを取るべきかは変わります。見立てをお伝えしたうえで、参入を見送るべきという結論になる場合も、その根拠とあわせて率直にお話ししています。

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【主な出典】国家薬品監督管理局 公告2021年第62号(《已使用化粧品原料目録(2021年版)》)/国家薬品監督管理局 公告2021年第74号(《化粧品禁用原料目録》の更新)/国家薬品監督管理局 公告2026年第59号(《化粧品新原料注册備案及資料管理規定》・2026年7月15日施行)/《化粧品監督管理条例》(国務院令第727号)第2条・第11条・第14条/《商務部等六部門による越境電子商務小売輸入の監督管理に関する通知》(商財発〔2018〕486号)第3条/中国食品薬品検定研究院《已使用化粧品原料目録》Ⅰ・Ⅱおよび調整説明(2026年8月24日照会)。規則・目録は改定されるため、実際の検討時には原文をご確認ください。

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