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中国越境EC規制・審査

日本の食品は中国の越境ECで売れるのか — 「登録不要」でも免除されない産地規制と、出店前に確かめる3つのこと

約12分で読めます監修:株式会社エフカフェ 越境EC事業部

この記事の要点

日本の食品を中国の越境EC(保税区モデル・直送モデル)で売るとき、中国での登録や届出は求められません。

ただし、免除されるのは初回輸入の許可・注册(登録)・备案(届出)の手続きであって、原発事故に伴う産地の規制ではありません。中国は新潟県産の精米を除く10都県のすべての食品・飼料の輸入を止めており(出典:農林水産省)、ジェトロの調査も、こうした規制がかかっている品目は越境ECでも輸入できないと整理しています。自社の食品が出せるかどうかは、工場の所在地、主原料の産地、HSコード(品目)の3点でおおよそ判定できます。

化粧品の場合、中国で売れるかどうかを最初に決めるのは成分です。当社のコラムでも中国で使えない化粧品成分の調べ方で、原料目録を引く手順を紹介しました。食品は事情が違います。成分を見る前に、「どこで作ったか」で可否が決まってしまう商品があるからです。

「越境ECなら登録なしで売れる」という説明は間違いではありません。ただ、この説明だけを聞いて出店準備を進めると、工場の所在地が理由で最初から出せない商品に時間と費用をかけることになりかねません。この記事では、日本政府の資料と中国側の条文を並べて、越境ECで免除されるものとされないものを切り分け、自社商品を判定する手順をまとめます。

越境ECの「登録不要」は、何が免除されているのか

免除されているのは、注册・备案と初回輸入の許可です。産地や検疫に関する規制までは免除されていません。

越境EC小売輸入のルールを定めた商財発〔2018〕486号の第三条は、越境ECの商品を「個人自用の進境物品」として監督し、初回輸入の許可批件・注册・备案の要求を執行しない、と定めています。食品や健康食品が登録なしで売れるという話の根拠はここにあります。

同じ条文には但し書きが続きます。原文は「但对相关部门明令暂停进口的疫区商品,和对出现重大质量安全风险的商品启动风险应急处置时除外」で、関係部門が輸入停止を命じた地域の商品と、重大な品質・安全上のリスクで緊急措置をとる商品は除く、という意味です(出典:中国政府網 商財発〔2018〕486号、2026年10月12日閲覧)。

越境ECで扱える品目を定めたポジティブリスト(正面清単)にも、越境ECの商品は486号の監督要件に従い、「进境检疫应符合有关法律法规的要求」、つまり入国時の検疫は法令の要求を満たさなければならない、という注記があります。リストの読み方は越境ECのポジティブリスト(正面清単)とはで詳しく扱っています。

条文は「10都県」を名指ししてはいません。それでも、越境ECの免除が手続きの免除であり、輸入停止や検疫まで外すものではないことは、条文の組み立てから読み取れます。

中国が止めている日本の食品はどれか

規制は3段階に分かれます。10都県の食品は全面停止、10都県以外でも野菜・乳・茶・果実・薬用植物の5つは実質停止、それ以外の食品は産地証明書を付ければ輸入できます。

農林水産省がまとめている「中国の輸入規制の概要(2025年6月29日以降)」の内容を整理すると、次のとおりです(2026年10月12日閲覧)。

対象品目中国の扱い
福島、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、長野 全ての食品、飼料 輸入停止
新潟 米/米を除く食品、飼料 米は産地証明書で輸入可/米以外は輸入停止
10都県以外 野菜及びその製品、乳及び乳製品、茶葉及びその製品、果実及びその製品、薬用植物産品 放射性物質検査証明書の条件で日中が合意しておらず、実質輸入停止
10都県以外 その他の食品・飼料 10都県以外で生産されたことの産地証明書を添付

3行目は見落とされがちです。工場が10都県の外にあっても、緑茶、牛乳やチーズ、果実を使ったジャムやゼリー、野菜の加工品などは、農林水産省の資料では実質的に輸出できない扱いです。農林水産省の資料は、その理由を「中国はストロンチウム90等の分析報告が必要と考えており、合意に至っていない」と説明しています。

ただし、天猫国際では、日本から直送する形で日本の大手メーカーの緑茶のティーバッグが出品されている例があります(2026年10月、当社が売場で確認)。商品ページの発送元は「日本」と表示されていて、保税区から出荷する商品(発送元に保税区が表示されます)とは違う、日本からの直送です。EMSで送っているのか、菜鳥の日本倉庫を経由しているのかは、画面からは分かりません。この出品がどの条件で通関しているのかも分かりませんが、資料のうえで難しい分類の商品が売場に並んでいることは事実です。この分類に入る商品は、資料だけで「出せない」と決めつけず、出せるかどうかを商品ごとにモール側と、輸入を担う中国側の事業者へ確認してください。

産地証明書が必要になるのは、主にHSコードの第1類から第24類、つまり食品・飲料のほぼ全般です。菓子、調味料、麺類、飲料、酒類などは4行目にあたり、産地証明書を付ければ輸入できる側に入ります。

水産物は扱いがこの数年で何度も変わっているため、この記事では対象外とします。水産物や水産物を原料にした加工食品を検討する場合は、農林水産省・水産庁の最新の案内で確認してください。

その規制は越境ECにも及ぶのか

及びます。日本の公的機関の調査も、中国の税関当局の発言も、越境ECを例外として扱っていません。

ジェトロが2025年3月に公表した「中国向け農林水産物・食品の越境ECに関する制度調査」(北京市環球法律事務所に委託)は、「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う輸入規制がされている品目や二国間で一般貿易の検疫条件が定まっていない品目は、越境EC 輸入は認められない」と書いています。同じ調査は、直送モデル・保税区モデルの通関書類として「一部商品については放射性物質検査合格証明書、産地証明書など」を挙げ、EMSなどの郵便ルート(海淘)についても10都県で生産された食品の入境を禁止していると整理しています。

中国の海関総署(税関当局)も2023年7月、「中国海关禁止进口日本福岛等十个县(都)食品」と述べ、日本の他地域の食品についても証明書類を厳しく審査し、全量を検査するとしています(出典:北京日報 京報網、2023年7月7日)。

「越境ECなら産地は問われない」と受け取れる説明を見かけることがありますが、少なくとも制度のうえでは、越境ECは産地規制の抜け道ではありません。

自社商品を判定する3つの質問

自社の食品が出せるかどうかは、次の3つの質問に上から答えるとおおよそ分かります。どれかで止まれば、その商品は越境ECでも出せない見込みが高いと考えてください。

  1. 最後に加工した工場は、10都県の外にあるか。農林水産省は、加工食品の産地証明書を出す条件の1つ目に「最終加工地が10都県(…)以外であること」を挙げています。本社が東京にあっても、最終加工の工場が10都県の外であれば、この質問は通過します。逆に、製造を委託している工場が10都県にあれば止まります
  2. 主原料は、10都県産ではないか。農林水産省は、最終加工地が10都県の外でも、主原料(商品に占める重量の割合が最も大きい原料)が10都県産でないことを条件にしています。主原料以外の原料の産地は問われません。原料の調達先が季節や年度で変わる場合は、どの時点のロットでも条件を満たすかを確かめてください
  3. HSコードは、野菜・乳・茶・果実・薬用植物の分類に入っていないか。前の章の表の3行目にあたれば、工場と原料の産地をクリアしていても、農林水産省の資料では実質的に出せない扱いです(天猫国際では出品例もあるため、モール側と輸入を担う事業者にも確認してください)。農林水産省の資料には、用途が食品の場合にHSコードを変えたうえで放射性物質検査証明書を求められることがある、という注意書きもあります。分類に迷う商品は、輸入を担当する現地の事業者を通じて事前に確認してください

もう1点、運送経路にも注意が必要です。農林水産省によると、産地証明書には運送経路が記載されるため、10都県内の場所が書かれていると通関でトラブルになる可能性があります。10都県以外の工場で作った商品でも、東京や千葉の倉庫を経由して出荷する場合は、通過するだけで問題にならないかを事前に中国側へ確認しておくよう案内されています。最終加工地が10都県の外でも、最後に保管した場所が10都県にある場合は、中国側の個別判断になります。

この3つの質問と運送経路の確認は、出店の検討を始める前に社内でできる作業です。商品ごとに「最終加工の工場の所在地」「主原料と産地」「HSコード」「出荷倉庫」を1行ずつ並べた表を作るところから始めると、候補の商品を早い段階で絞り込めます。

産地をクリアしたあとに確かめること

産地の条件を満たした商品でも、越境ECで売るまでにはまだ確認が残ります。主なものは次の4つです。

確認すること内容
ポジティブリストに載っているか 越境ECで輸入できるのは、ポジティブリストに税則番号が載っている商品だけです。精米のように、1人あたりの購入量に上限(年間20kgまで)が付いている品目もあります(出典:ジェトロ 2025年3月調査)
中国側の受託企業を用意できるか 天猫国際は2026年5月27日施行の規則で、食品大類の出店書類に、中国国内の会社の営業許可証・食品経営許可証・法定代表者の身分証と、越境EC小売輸入食品の委託経営契約の4点を明記しています。詳しくは天猫国際の越境EC食品規制と天猫国際の出店の流れと必要書類をご覧ください
中国の食品規格に合っているか ジェトロの調査によると、越境ECの商品は中国の規格への適合は不要という見解がある一方、汚染物質や微生物などの残留値は中国の基準を超えてはならないという見解を示す税関もあり、輸入港を管轄する税関への確認が必要とされています
工場の登録が要るか 一般貿易では、中国向けに食品を輸出する海外工場は中国税関への登録が必要です。越境ECについては、2026年6月1日施行の海関総署令第280号が「按照有关规定办理」(関係規定による)として別扱いにしており、ジェトロの調査も、現行政策上は越境ECの海外製造企業は登録を要しないとの情報を紹介しています。ただし地域で見解が異なる可能性があるとも書いています

税金の考え方は越境ECの税金はいくらかかるのか、物流モデルの選び方は中国向け越境EC 物流ガイドで扱っています。

よくある質問

Q. 越境ECなら、10都県で作った食品も中国に売れますか。
A. 売れないと考えてください。越境ECで免除されるのは初回輸入の許可・注册・备案の手続きで、486号は輸入停止を命じられた地域の商品を免除の例外としています。ジェトロの2025年3月の調査も、原発事故に伴う輸入規制がかかっている品目は越境ECでも輸入できないと整理しています。

Q. 本社が東京にありますが、工場は別の県です。輸出できますか。
A. 判定の基準は本社ではなく、最後に加工した工場の所在地と主原料の産地です。農林水産省は、最終加工地が10都県以外で、主原料(重量の割合が最も大きい原料)が10都県産でないことを、加工食品の産地証明書の条件にしています。あわせて、HSコードが野菜・乳・茶・果実・薬用植物の分類に入らないかと、出荷する倉庫の場所も確認してください。

Q. 緑茶や乳製品は、10都県以外で作れば越境ECで売れますか。
A. 農林水産省の資料では、実質的に難しい状況です。農林水産省の資料によると、10都県以外の産地でも、野菜・乳製品・茶葉・果実・薬用植物とそれらの製品は、放射性物質検査証明書の条件で日中が合意していないため、実質輸入停止になっています。一方で、天猫国際では日本から直送する緑茶が出品されている例もあります(どの条件で通関しているかは不明)。資料だけで判断せず、商品ごとにモール側と、輸入を担う中国側の事業者へ確認してください。

Q. 水産物や、水産物を使った加工食品はどうですか。
A. 水産物の扱いはこの数年で何度も変わっており、この記事では扱っていません。ジェトロの調査も、水産物を原料とする加工食品が規制の対象になるかは不明瞭としています。検討する場合は、農林水産省・水産庁の最新の案内と、輸入港を管轄する税関への確認が必要です。

Q. 越境ECの食品に中国語のラベルは必要ですか。
A. ジェトロの調査では、直送モデル・保税区モデルの越境ECでは中文ラベルの貼付は不要と整理されています。一般貿易で輸入する場合は必要です。出店するモールが独自に求める表示がないかは、規則の原文で確認してください。

まとめ

越境ECで食品を売るときの「登録不要」は、注册・备案と初回輸入の許可が免除されるという意味です。中国が日本の食品に設けている産地の規制は、越境ECでも外れません。10都県の食品は全面停止、10都県以外でも野菜・乳・茶・果実・薬用植物は実質停止、それ以外は産地証明書を付ければ輸入できる、というのが現在の制度の枠組みです。ただし、茶葉のように、資料では難しい分類でも売場に出品例があるものがあります。最終的に出せるかどうかは、商品ごとにモール側と、輸入を担う中国側の事業者へ確認してください。

食品メーカーが最初にやるべきことは、モールの比較や費用の見積もりではなく、候補の商品ごとに最終加工の工場、主原料の産地、HSコード、出荷倉庫を並べることです。ここで残った商品について、ポジティブリスト、中国側の受託企業、規格と工場登録の確認に進めば、出せない商品に準備の時間を使わずに済みます。越境ECが自社に合うかどうかの全体の判断軸は越境ECのリスクと向き不向きにまとめています。

当社では、天猫国際をはじめとする中国越境ECへの出店について、扱う商品の絞り込みから出店準備、運営までをお手伝いしています。「この商品は出せるのか」という段階からご相談いただけます。

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