越境ECのポジティブリスト(正面清単)とは — 扱える商品の範囲と、自社商品が対象かを税則号列で調べる手順
目次
中国の越境EC(跨境電商小売輸入)で扱える商品は、《跨境電子商務零售進口商品清単》というリストに載っている品目に限られます。いわゆるポジティブリスト(正面清単)です。重要なのは、このリストが商品名やブランド名ではなく「税則号列」——日本でいうHSコードの8桁——の単位で並んでいることです。つまり自社商品が対象かどうかは、品目数を覚えることではなく、自社商品の税目でリストを引いて備考欄まで読むことで判定します。この記事では、中国政府が公表している公告とその附件の原文をもとに、リストの現行版・並び方・備考欄の読み方と、自社商品を当てる手順を整理します。
ポジティブリストとは — 「載っているものだけ通る」正面清单
中国の越境EC小売輸入には、扱える商品の範囲を政府が列挙する仕組みがあります。列挙されたものだけが通るので「正面清単(ポジティブリスト)」と呼ばれます。禁止品目を並べるネガティブリストとは逆の建て付けで、リストに載っていない品目は、そもそも越境EC小売輸入というルートに乗りません。
この点は、日本語の解説で「ポジティブリストとは税の優遇を受けられる商品の一覧」と説明されることがあり、やや誤解を招きます。たしかに越境EC小売輸入には関税0%・増値税と消費税は法定納税額の70%という税の枠組みが用意されていますが、リストの役割は優遇の対象を決めることだけではありません。参入できるかどうかの入口条件でもあります。
もうひとつ押さえておきたいのが、リストと免除枠の関係です。越境EC小売輸入の商品は「個人自用の進境物品」として管理され、初回輸入許可批件・注册・備案の要求が執行されません(出典:商務部等六部門《関于完善跨境電子商務零售進口監管有関工作的通知》商財発〔2018〕486号 第三条「対跨境電商零售進口商品按個人自用進境物品監管,不執行有関商品首次進口許可批件、注册或備案要求」)。この扱いが適用されるのは、リストに載っている商品であることが前提です。NMPAの備案・注册が免除される仕組みの土台にリストがあると考えると、位置づけが掴みやすいはずです。
現行版はどれか — 八部門公告2022年第7号(2022年3月1日施行)
リストは一度作って終わりではなく、何度か調整されています。そのため「最新版はどれか」を先に確定させないと、古い前提で判断してしまいます。
現行の調整を定めているのは、財政部・発展改革委・工業和情報化部・生態環境部・農業農村部・商務部・海関総署・中華人民共和国絶滅危惧種輸出入管理弁公室の8部門による《関于調整跨境電子商務零售進口商品清単的公告》(公告2022年第7号)です。2022年3月1日から施行され、2019年版のリストを調整する形をとっています(出典:中国政府網 掲載の公告本文、および文化和旅游部の転載)。
この公告の附件が《跨境電子商務零售進口商品清単調整表》で、次の4つの部分で構成されています。
| 調整の区分 | 内容 |
|---|---|
| 一、増加29項商品 | 近年需要が伸びた品目を追加。トマトジュース、家庭用食器洗い機、スキー用具、ゴルフ用具、かつら、三脚などが並ぶ |
| 二、削除1項商品 | 剣・短刀・銃剣・槍などの武器類(税則号列93070090)を削除 |
| 三、税則号列の調整 | 近年の関税率表の改訂に合わせ、新設された税目を追加し、廃止された税目を削除 |
| 四、206項商品の備考の調整 | 取引モデルの限定・種の証明の要否・数量の上限などの条件を書き換え |
品目の合計数について補足します。公表されている解説では調整後のリストは1,476税目とされていますが、公告の附件(調整表)そのものには合計数の記載がありません。附件は「何を足し、何を引き、どの備考を変えたか」を列挙する差分表の形をとっているためです。合計数は目安として押さえ、実務では次章以降の「自社の税目で引く」ほうを軸にしてください。
なお、当社が2026年9月14日に中国政府網・財政部で再確認した時点でも、この公告2022年第7号より後にリスト全体を改訂した公告は確認できていません。「2023年版」「2026年最新版」といった表記を見かけることがありますが、内容をたどると2022年3月施行の調整を指している場合があります。リストの版を確認するときは、公告番号(2022年第7号)と施行日(2022年3月1日)で照合してください。規則は改定されるため、検討時点で最新の公告が出ていないかを合わせて確認するのが安全です。
リストは商品名ではなく「税則号列」で並んでいる
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
附件の表の列は、序号/税則号列/商品描述/備注の4つです。つまりリストの主キーは税則号列=関税率表の品目番号(8桁)であり、商品名やブランド名ではありません。「商品描述」は税目に付いた説明文であって、個別の製品名を意味しません。
実際の記載を見ると、たとえばこうなっています。
| 税則号列 | 商品描述 | 備注 |
|---|---|---|
| 20095000 | 番茄汁(トマトジュース) | (なし) |
| 84221100 | 家用型洗碟機(家庭用食器洗い機) | (なし) |
| 29252900 | 其他亜胺及其塩和衍生物 | 仅限一水肌酸(クレアチン一水和物に限る) |
| 03072910 | 其他扇貝(その他のホタテ) | 仅限網購保税商品 |
この構造には実務上の意味があります。「うちの美容ドリンクは対象ですか」という問いは、そのままではリストに当てられません。その商品が関税率表のどの8桁に分類されるかが決まらないと、リストを引けないからです。逆に税目が決まってしまえば、対象かどうかも、どんな条件が付くかも、リストを見れば分かります。
3行目の29252900のように、税目としては広いのに備考で中身を絞っているケースがあるのも見落としやすい点です。同じ税目に分類される化学品であっても、備考で指定された物質でなければリストの対象になりません。税目まで辿ったうえで、備考を必ず読む必要があります。
備考欄を読む — 載っていても条件が付く3つの型
附件の「四、調整206項商品的備注」が示すとおり、備考欄はリストの重要な一部です。今回の調整表に現れる備考は、大きく次の3つの型に整理できます。いずれも原文の文言をそのまま引いています。
| 型 | 備考の原文 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 取引モデルの限定 | 仅限網購保税商品 | 保税区に在庫を置くモデル(網購保税進口)でのみ扱える。海外から個人へ直接送る直送モデルでは扱えない |
| 種の証明の要否 | 列入《進出口野生動植物種商品目録》且不能提供……物種証明的商品除外 | 絶滅危惧種の輸出入管理の対象に入る品目は、管理弁公室の証明を出せない場合は対象外になる |
| 数量の上限 | 每人每年進口……的商品合計不超過2公斤 | 糖類の9税目については、購入者1人あたり年間2kgまでという上限が付く |
1つめの「仅限網購保税商品」は、当社が相談を受けるなかでも影響が大きい条件です。乳製品、ヨーグルト、はちみつ関連、燕の巣、ナッツ類、香辛料、海藻類、乾燥果実といった食品系の税目に広く付いています。該当する商品を海外直送モデルで売る計画を立てていると、前提が崩れます。在庫を保税区に置く形にするか、商品構成を見直すかの判断が要るため、物流モデルの選択とあわせて早い段階で確認しておきたい条件です。
3つめの数量上限は読み違えやすいので補足します。これは購入者ひとりが1年間に買える量の上限で、ブランド側の販売数量の上限ではありません。越境EC小売輸入には別に1回あたり・年間あたりの購入金額の上限もありますが、こちらも同じく購入者側の枠です。詳しくは税と限度額の記事にまとめています。
自社商品が対象かを調べる手順
ここまでを踏まえると、判定の手順は次の4つに整理できます。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1. 税目を確定させる | 自社商品が中国の関税率表でどの8桁に分類されるかを確定させる。処方・形状・用途・容器で分類が変わるため、輸出時のHSコードをそのまま流用せず、中国側の分類として確認する |
| 2. リストを引く | 確定した税則号列で、公告2022年第7号の附件と2019年版のリストを照合する。附件は差分表なので、附件だけを見て「載っていない」と判断しないこと |
| 3. 備考欄を読む | 取引モデルの限定・種の証明・数量上限が付いていないかを確認する。備考が空欄であることもここで確認する |
| 4. 別の規制を重ねる | リストの条件を満たしたうえで、成分・表示・出店資質の要件を別に確認する(次章) |
手順1でつまずくケースが最も多いです。とくに健康食品や美容ドリンクのように、食品・飲料・調製品のどれに寄るかで税目が変わる商品は、社内の判断だけで確定させないほうがよいと考えています。分類が1桁違うだけで、備考の条件も税率も変わってしまうためです。
手順2の注意点も実務的です。公告2022年第7号の附件は2019年版に対する調整表であり、リストの全量ではありません。したがって「附件を検索したが自社の税目が出てこない」ことは、対象外を意味しません。2019年版のリスト本体と合わせて確認する必要があります。
「載っている」だけでは売れない — 別にかかる規制
リストは入口の条件であって、それだけで販売できるわけではありません。同時に確認すべきものが少なくとも3つあります。
ひとつは成分・表示の規制です。越境EC小売輸入では備案・注册の要求が執行されませんが、これは登録手続きが免除されるという意味で、何を書いてよいかまで自由になるわけではありません。中国国内で保健機能をうたえないなど、表示・広告側の制約は別途かかります。この論点はNMPA・規制実務の記事で整理しています。
ふたつめは食品・健康食品に固有の義務です。2026年からは中国国内の受託企業の届出が求められるようになっており、リストに載っている食品であっても、この体制がないと販売の準備が整いません(越境EC食品規制の記事)。
みっつめはプラットフォーム側の出店資質です。天猫国際に出店するには店舗タイプごとの必要書類や商標の授権があり、リストとは別の審査になります(出店の流れと必要書類)。「リストに載っている」は必要条件のひとつにすぎないという整理をしておくと、社内での説明もぶれません。
載っていなかったときの選択肢
自社商品の税目がリストに見当たらなかった場合、越境EC小売輸入のルートは使えません。ただし中国市場そのものを諦める話になるわけではなく、次の分岐に移ります。
| 状況 | 次に検討すること |
|---|---|
| リストに載っている(備考の条件も満たす) | 成分・表示、食品なら受託企業の体制、出店資質を順に確認する |
| リストに載っているが「仅限網購保税商品」が付く | 保税区に在庫を置く前提で物流と初期在庫を設計し直す |
| リストに載っていない | 一般貿易での輸入を検討する。この場合は備案・注册などの手続きが免除されず、期間と費用の見通しが変わる |
| 税目が確定できない | まず分類を確定させる。ここが決まらないと、リストも税率も条件も判断できない |
越境ECと一般貿易は、どちらが優れているという関係ではありません。手続きが軽い越境ECで需要を確かめてから、量が見えた段階で一般貿易に移すという段階の踏み方も現実的な選択です。一方で、商品や事業の前提によっては参入を見送るべきという結論になることもあります。判断の軸は越境ECのリスクと向き不向きにまとめてあります。
よくある質問
Q. ポジティブリストの最新版はどれですか。
A. 現行は財政部等8部門による公告2022年第7号で調整された版で、2022年3月1日から施行されています。2026年9月14日時点でも、これより後にリスト全体を改訂した公告は確認できていません。版を確認するときは、公告番号と施行日で照合してください。
Q. リストは何品目ありますか。
A. 公表されている解説では調整後は1,476税目とされています。ただし公告の附件そのものには合計数の記載がなく、附件は追加・削除・備考変更を列挙した差分表です。実務では合計数より、自社商品の税則号列で引けるかどうかが重要になります。
Q. 自社商品が載っているかは、商品名で検索すれば分かりますか。
A. 分かりません。リストは税則号列(8桁)と、その税目に付いた説明文で構成されており、商品名やブランド名では管理されていないためです。まず自社商品が中国の関税率表でどの税目に分類されるかを確定させる必要があります。
Q. リストに載っていれば、備案や注册は不要ですか。
A. 越境EC小売輸入の商品は個人自用の進境物品として管理され、初回輸入許可批件・注册・備案の要求が執行されません(商財発〔2018〕486号 第三条)。ただしこれは登録手続きの話で、表示や広告の規制、食品の受託企業の届出、プラットフォームの出店資質は別にかかります。
Q. 「仅限網購保税商品」と書かれていたら、どう対応すればよいですか。
A. その税目は保税区に在庫を置くモデルでのみ扱える、という意味です。海外直送を前提にしていた場合は、保税区在庫に切り替えるか、商品構成を見直すかの判断になります。初期在庫と物流費の前提が変わるため、事業計画の段階で確認しておくことをおすすめします。
まとめ — 品目数ではなく、自社の税目で引く
ポジティブリストの話は、品目数や版の年号を覚える話になりがちです。ただ社内で必要になるのは「うちのこの商品はどうなのか」という一点で、そこに答えるにはリストが税則号列で並んでいることを理解し、自社商品の税目を確定させ、備考欄まで読むという手順を踏むしかありません。
順序をもう一度整理すると、①自社商品の税目を確定させる、②その税目でリストを引く、③備考欄の条件(取引モデルの限定・種の証明・数量上限)を確認する、④成分・表示・食品の届出・出店資質を重ねる、という流れです。ここまで確認できれば、参入できるかどうかを社内で説明できる状態になります。
なお、リストも規則も改定されます。検討のタイミングで最新の公告が出ていないかを確認し、税目の分類は自社判断で確定させないことが、後戻りを防ぐいちばん現実的な方法だと考えています。