中国越境EC規制・審査
越境ECの健康食品は中国で何を書けるのか — 保健機能を「書けない」根拠と、書ける範囲の線引き
この記事の要点
越境EC(保税区モデル・直送モデル)で中国に販売する健康食品は、中国での保健食品の登録(注册・備案、通称「藍帽子」)を経ずに販売できます。
その一方で、商品ページや広告で保健機能をうたうことはできません。中国の法令では保健機能を表示できるのは注册または備案を経た「保健食品」に限られており(食品安全法実施条例 第38条)、越境ECの商品はその手続きを免除されている、つまり経ていないからです。上海市市場監督管理局も2025年12月、越境ECで輸入した未登録の保健食品は普通食品であり保健機能を表示できない、と回答しています。病気の予防や治療に触れる表現は、どの食品でも認められていません。
「越境ECなら登録なしで売れます。ただ、効果効能は書けません」。中国向けの相談をすると、たいていこの2文がセットで返ってきます。前半の根拠はよく知られていますが、後半については「なぜ書けないのか」「どこまでなら書けるのか」を条文で説明している資料がほとんどありません。当社のコラムでも、これまで化粧品・健康食品のNMPA・規制実務などで「保健機能は標榜できない」と書いてきましたが、その根拠を一か所にまとめてはいませんでした。
この記事では、中国の法令と当局の回答の原文をたどって「書けない」理由をつなげたうえで、日本の機能性表示食品の言い回しが中国でどこに当たるのか、書けない前提で何を書くのかまでを整理します。
「書けない」は慣習ではなく、条文から出てくる
越境ECで保健機能を書けない理由は、ひとつの条文に書かれているわけではありません。4つの規定をつなげると、その結論になります。
| 段階 | 根拠 | 書かれていること |
|---|---|---|
| ① 保健機能を言えるのは誰か | 食品安全法実施条例 第38条 | 「対保健食品之外的其他食品,不得声称具有保健功能」=保健食品以外の食品は、保健機能があると表示してはならない |
| ② 保健食品とは何か | 食品安全法 第76条・第78条 | 保健食品は注册(登録)または備案(届出)を経るもの。表示・説明書は注册・備案の内容と一致していなければならない |
| ③ 越境ECの扱い | 商財発〔2018〕486号 第三条 | 越境EC小売輸入の商品は「個人自用の進境物品」として監督し、初回輸入の許可批件・注册・備案の要求を執行しない |
| ④ 当局の整理 | 上海市市場監督管理局の回答(2025年12月22日) | 注册・備案を経ていないものは普通食品であり、保健機能を表示できない(次の章で詳述) |
①と②で「保健機能を言えるのは、登録や届出を済ませた保健食品だけ」という枠が決まり、③で越境ECの商品はその登録・届出を免除されます。免除は「手続きをしなくてよい」という意味なので、結果として越境ECの商品は保健食品としての手続きを経ていない状態になり、①の「保健食品以外の食品」の側に入ります。
ここで押さえておきたいのは、486号そのものは「保健機能を標榜してはならない」とは書いていない点です。486号が定めているのは③の免除までで、書けないという結論は食品の表示・広告の規定の側から出てきます。社内で説明するときは、486号を「書けない理由」として示すのではなく、「登録を免除する根拠」として示し、書けない理由は実施条例第38条で示すのが正確です(出典:食品安全法=国家市場監督管理総局ウェブサイト掲載の条文、実施条例=司法部 国家行政法規庫、486号=中国政府網、いずれも2026年9月30日閲覧)。
当局は越境ECの輸入品について何と答えているか
上の鎖は条文を読めばたどれますが、「越境ECは特別な枠組みだから別扱いではないか」という疑問は残ります。これについては、地方の市場監督管理局が照会に答えた記録が公開されています。
上海市市場監督管理局(2025年12月22日回答)。質問は「越境EC小売の方式で輸入した保健食品が、国内で保健食品の注册・備案をしていない場合、国内の広告宣伝で保健機能を宣伝できるか」というものです。回答は、保健食品として国内で販売するには注册または備案が必要であること、保健食品以外の食品は保健機能を表示できないこと、486号により越境ECの商品は注册・備案を執行しないことを順に示したうえで、次のように結んでいます。
「经保健食品注册或备案,按照保健食品要求生产的食品类别为“保健食品”,可以声称相应的保健功能,未经保健食品注册或备案,按照普通食品要求生产的食品类别为普通食品,不得声称保健功能。」(注册または備案を経て保健食品の要求どおりに生産されたものは「保健食品」であり、相応の保健機能を表示できる。注册・備案を経ず普通食品の要求どおりに生産されたものは普通食品であり、保健機能を表示できない)
(出典:上海市市場監督管理局「網上咨詢」、2026年9月30日閲覧)
広東省市場監督管理局(揭陽市榕城区政府サイトに2023年10月9日転載)。同じ趣旨の質問に対し、保健食品は注册文号または備案凭証を取得して初めて生産・経営できること、越境ECの商品は個人自用物品として扱われ購入後の再販売ができないこと、広告法第18条が保健食品広告に課している禁止事項を示しています。こちらは「できない」と一文で言い切る形ではなく、該当する規定を並べる回答です。
この2つは地方当局による照会への回答で、全国で拘束力を持つ規則そのものではありません。ただ、根拠として引いているのはいずれも全国に適用される法律・行政法規です。本稿の調査では、これと反対の整理(越境ECの商品なら保健機能を書ける)を示した当局の資料は見つかりませんでした。
加えて、2026年4月2日には国務院食品安全弁公室・国家市場監督管理総局・海関総署が、越境ECで輸入される保健品の違法な販売手法をめぐって、抖音・淘天・小紅書の3社を約談(呼び出して指導)しています。越境ECの健康食品の宣伝が、当局の関心の中心にあるということです。経緯は越境ECの出店審査はなぜ厳しくなったのかで書いています。
日本の機能性表示の言い回しは、中国ではどこに当たるか
日本の機能性表示食品やトクホで使っている表示を、中国語に訳して商品ページに載せたいという相談はよくあります。ここで知っておきたいのは、中国では保健食品が表示できる機能そのものが目録で決まっている、ということです。
国家市場監督管理総局・国家衛生健康委員会・国家中医薬管理局が定める「允许保健食品声称的保健功能目录」(保健食品が表示できる保健機能の目録)には、24項目の機能名が並んでいます(出典:泉州市市場監督管理局の消費者向け警示、2025年11月7日掲載、2026年9月30日閲覧)。つまり、登録を経た保健食品であっても、書ける機能はこの24項目の名称の範囲です。
日本の機能性表示でよく見る言い回しを、この24項目に当てはめると次のようになります。対応づけは当社が例として整理したもので、個々の表示がどう判断されるかは表現と文脈によります。
| 日本でよく見る表示の方向性 | 近い中国の保健機能(24項目の名称) |
|---|---|
| 睡眠の質の向上 | 有助于改善睡眠 |
| おなかの脂肪・体脂肪を減らす | 有助于控制体内脂肪 |
| おなかの調子を整える | 有助于调节肠道菌群/有助于润肠通便 |
| 肌の潤いを守る | 有助于改善皮肤水分状况 |
| 一時的な疲労感の軽減 | 缓解体力疲劳 |
| 目のピント調節・目の疲れ | 缓解视觉疲劳 |
| 血圧・血糖値・中性脂肪が気になる方に | 有助于血压维持健康水平/有助于维持血糖健康水平/有助于维持血脂(胆固醇甘油三酯)健康水平 |
| 記憶力の維持 | 辅助改善记忆 |
表の右列は、中国では保健食品として登録・届出を済ませた製品だけが使える領域です。言い換えると、日本の機能性表示の多くは、中国ではそのまま保健機能の表示に当たる可能性が高いということです。越境ECの商品ページで、日本の届出表示を中国語に置き換えて載せるやり方は、この点で成り立ちにくいと考えておくべきです。
登録を取って機能を書く道(一般貿易での保健食品の注册・備案)は、化粧品・健康食品のNMPA・規制実務で整理しています。
どの食品でも書けないもの ― 病気の予防・治療
保健機能とは別に、もう一段強い線があります。病気の予防や治療に触れる表現は、保健食品であっても、普通食品であっても書けません。
- 食品安全法 第71条:食品の表示・説明書は、虚偽の内容を含んではならず、疾病の予防・治療機能に触れてはならない
- 食品安全法 第73条:食品の広告は、真実かつ適法でなければならず、疾病の予防・治療機能に触れてはならない
- 広告法 第17条:医療・医薬品・医療機器の広告を除き、いかなる広告も疾病の治療機能に触れてはならず、医療用語や医薬品・医療機器と混同させる用語を使ってはならない
(出典:食品安全法=国家市場監督管理総局、広告法〔2021年修正〕=商務部 全球法規網、いずれも2026年9月30日閲覧)
実務では、成分の研究紹介の形をとっていても、特定の病名と結びつけた時点でこの線に触れると考えるのが安全です。「〇〇病の方に」「予防に」「改善に効く」といった言い回しは、保健機能の問題以前に、食品として書けない表現です。中国の広告規制全般については中国越境ECの規制を完全ガイドもあわせてご覧ください。
では何なら書けるのか ― 3つの層
機能を書けないとなると、何を書けば売れるのかが本題になります。法令から言える範囲で、書ける情報を3つの層に分けます。
| 層 | 中身 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 事実の情報 | 原材料・配合量、原産国、製造方法、品質管理、摂取目安、日本での販売の経緯など | 虚偽や誤認を招く内容は不可(広告法 第4条)。事実でも、病気や保健機能に結びつける書き方にすると①の範囲を外れる |
| ② 栄養成分の働き | ビタミン・ミネラル等の栄養成分について、国家標準が定める「作用声称」の標準用語 | 標準用語は改変・追加・合成が不可(下記)。含有量の条件を満たすことが前提 |
| ③ ブランドと使い方の文脈 | 誰が、どんな場面で、どう取り入れているか。ブランドの成り立ち | 「飲んだら〇〇が改善した」型の体験談は、機能の主張と受け取られやすい |
②について補足します。中国の予包装食品の栄養表示の国家標準(GB 28050)は、2025年版が2027年3月16日に実施されます。国家衛生健康委員会が公表した問答は、栄養成分の作用声称について「必须使用标准用语,不得删改、添加和合并,更不能任意编写」(標準用語を使わなければならず、削る・書き換える・付け足す・組み合わせることはできず、自由に作文することはなおさらできない)と説明し、カルシウムであれば含有量が「高钙」などの条件を満たした場合にのみ「钙有助于骨骼和牙齿的发育」(カルシウムは骨や歯の発育を助ける)といった標準用語を使える、という例を挙げています(出典:国家衛生健康委員会 食品安全標準・監測評価司「GB 28050-2025 問答」2025年9月25日、2026年9月30日閲覧。要確認=2026年10月5日の再照合では同ページを取得できず、実施日と引用文を原文で照合し直せていません)。
ただし、越境ECの商品はもともと中国語ラベルがなくてもよく(486号は、商品に中国語ラベルがない可能性があり消費者は中国語の電子ラベルを閲覧できる、という告知を求めています)、原産地の基準に沿って作られている前提です。この栄養表示の国家標準が越境ECの商品ページにどこまで適用されるかは、本稿の調査では一次資料で確認できませんでした。ここでは「中国の普通食品が栄養成分の働きを言うときに、国家標準が用意している言い方」として紹介しています。使う場合も、標準用語の外に出ないことが前提です。
もうひとつ、出店するモールの商品発布の規範も書ける範囲を左右します。天猫国際の健康食品カテゴリの具体的な禁止表現については、本稿では規則原文を特定できていないため、出店時に規則原文と担当の審査で確認してください。
KOLやライブ配信も同じルールで見られる
商品ページで気をつけていても、KOLの投稿やライブ配信で機能をうたってしまえば意味がありません。中国ではこれらも広告として扱われます。
広告法第18条は、保健食品の広告について、効果・安全性の断言や保証、疾病の予防・治療への言及、健康に必要不可欠だと示すこと、医薬品や他の保健食品との比較に加えて、「広告代言人(推薦者)による推薦・証明」を禁じています。第46条は、保健食品の広告は発布前に審査を受けなければならないとしています。国家市場監督管理総局令第21号(2020年3月1日施行)は、その審査で保健食品広告の内容を注册証書・備案凭証と登録・届出した説明書の内容に基づかせています。注册・備案を経ていない越境ECの商品は、この審査の前提となる書類を持たない、という関係になります(出典:広告法=商務部 全球法規網、令第21号=北京市人民政府ウェブサイト掲載、いずれも2026年9月30日閲覧)。
また、国家市場監督管理総局は2026年4月から半年間、ネットでの食品・保健食品の虚偽宣伝の専項整治を行っており(市監特食発〔2026〕33号)、対象にはプラットフォーム内の事業者に加えて、ライブ配信の運営者や広告代言人も含まれています。この通知は越境ECを名指ししてはいませんが、KOLやライブで健康食品を売る場面が取り締まりの射程にあることは読み取れます。
KOL施策の設計そのものは中国KOL・ライブコマース運用の実務、小紅書での発信は小紅書(RED)マーケティングで扱っています。いずれの場合も、KOLに渡すブリーフ(原稿の指示書)に「言ってはいけないこと」を明記し、投稿前に確認する工程を入れておくのが現実的です。
商品ページや原稿を出す前の確認リスト
商品ページ・広告・KOLのブリーフを出す前に、次の6点を上から確認してください。
- 日本の届出表示を訳した文が残っていないか。前の章の表の右列にあたる内容(睡眠・体脂肪・腸内環境・肌の水分・疲労・目・血圧や血糖など)を言っている箇所を拾い出す
- 病名・症状名・「予防」「治療」「改善」が出てこないか。成分研究の紹介の形でも、病気と結びつけていれば削る
- 「保健食品」「保健品」と名乗っていないか。上海市当局の回答に照らすと、登録を経ていない商品を保健食品として打ち出すこと自体が論点になり得る
- 栄養成分の働きを書くなら、標準用語のままか。含有量の条件を満たしているか、語句を足したり組み合わせたりしていないか
- 体験談・ビフォーアフター・医師や専門家の推薦がないか。機能の主張や推薦・証明として受け取られやすい
- 出店モールの規則原文と照合したか。確認した規則名・日付を記録に残す
原料そのものが中国で使えるかという別の論点については、健康食品の原料を名簿で確認する手順を別の記事で準備しています。越境ECで扱える品目の範囲は越境ECのポジティブリスト(正面清単)とは、健康食品を含む食品の出店要件は天猫国際の越境EC食品規制をご覧ください。
よくある質問
Q. 越境ECなら、中国で健康食品の効果効能を書いてもよいのではありませんか。
A. 書けません。中国の法令では保健機能を表示できるのは注册・備案を経た保健食品だけで(食品安全法実施条例 第38条)、越境ECの商品はその手続きを免除されています(商財発〔2018〕486号)。上海市市場監督管理局も2025年12月、越境ECで輸入した未登録の保健食品は普通食品であり保健機能を表示できないと回答しています。
Q. 日本の機能性表示食品の表示を中国語に訳して載せてもよいですか。
A. 避けるべきです。中国の保健食品が表示できる機能は24項目の目録で決まっており、睡眠・体脂肪・腸内環境・肌の水分・疲労といった日本の機能性表示の多くは、この目録の領域と重なります。登録を経ていない越境ECの商品では、これらを表示できません。
Q. 486号に「保健機能を標榜してはならない」と書いてあるのですか。
A. 書いてありません。486号が定めているのは、越境ECの商品に注册・備案などを求めないという免除です。書けないという結論は、保健機能を保健食品に限る食品安全法実施条例第38条などの規定から導かれます。
Q. では商品ページには何を書けばよいのですか。
A. 原材料や配合量、原産国、製造方法、品質管理、摂取目安といった事実の情報が中心になります。栄養成分の働きについては国家標準(GB 28050)が標準用語を定めており、書く場合は語句を変えずに使うことが前提ですが、越境ECの商品ページにこの標準がどこまで適用されるかは確認できていません。出店モールの規則原文とあわせて確認してください。
Q. KOLやライブ配信で紹介してもらうのは問題ありませんか。
A. 紹介すること自体ではなく、何を言うかが問題になります。広告法は保健食品の広告で推薦者による推薦・証明を禁じており、2026年4月からの虚偽宣伝の専項整治はライブ配信の運営者や広告代言人も対象にしています。KOLに渡す原稿の指示に禁止表現を明記し、投稿前に確認する工程を入れてください。
まとめ
越境ECで中国に健康食品を売るとき、登録の手続きは免除されます。その代わり、保健食品として登録・届出を経ていない以上、保健機能は書けません。この結論は業界の慣習ではなく、保健機能を保健食品に限る実施条例第38条、保健食品を注册・備案で定義する食品安全法、登録を免除する486号をつなげると出てくるもので、上海市の当局も同じ整理を示しています。病気の予防や治療に触れる表現は、それとは別に、どの食品でも書けません。
日本の機能性表示の言い回しの多くは、中国では保健機能の領域に入ります。越境ECで売るなら、機能を書かずに何を伝えるかを最初から設計する必要があります。事実の情報、標準用語の範囲での栄養成分の働き、ブランドと使い方の文脈。この3つで商品ページとKOLの原稿を組み立て、公開前に確認する工程を持っておくことが、売り場を失わないための前提になります。
当社では、中国向けの商品ページやKOL施策について、書ける範囲の線引きを含めた設計と運用をお手伝いしています。表現の確認を社内でどう回すかといった段階からご相談いただけます。