『ユーザーインタビューの教科書』から学ぶ心得


エフカフェでは「CX Navigate」というサービスを提供しています。
「CX」すなわち、「顧客の体験価値」向上のために様々なアプローチ方法をご提案しております。
ユーザーインタビューもそのひとつです。

ユーザーインタビューと聞いて想像するのは、「自社の商品やサービスについてどう思っているのか、どうやって使っているのか。」という内容ではないでしょうか?
間違いではありません。しかしユーザーインタビューによって得られる最大の情報はそのユーザーの「価値観」「行動心理」です。

自身の「価値観」「行動心理」について常日頃から考えている方はそう多くはないでしょう。インタビューを受けるユーザーも同じく「あなたの価値観を教えて?」と聞かれても言葉に詰まるか、常識的な範囲での回答となるでしょう。ユーザーインタビューでは質問を繰り返すことでユーザーの心の奥底に眠る「価値観」「行動心理」を発掘することが目的です。

ただ、これがなかなかに難しいのです・・・
エフカフェで「CX Navigate」を始めた当初からバイブルとして読まれている本があります。

それは『マーケティング/商品企画のための ユーザーインタビューの教科書』という”神の本”です。今回はこの書籍を参考に、ユーザーインタビューを行う際の心得をご紹介します。

ラポールの形成が肝心

“ラポール”とはフランス語で”橋をかける”という意味で、日本語に訳すなら”関係”や”つながり”と解します。書籍では以下のように記されています。

コミュニケーションをしようとしている二者を互いに信頼し合い、気兼ねなく心を開いて語り合える関係のこと”ラポール”といいます。

ユーザーインタビューを行う際にはこのラポールの形成がとても重要になります。

そもそもユーザーインタビューに応じてくれる方は、インタビューに慣れていない場合の方が圧倒的に多く、不安を抱えて来てくださっています。まずは、相手の不安を取り除くところからラポール形成は始まります。たくさん話してもらい、「楽しかった」「来て良かった」と思ってもらいましょう。

清潔感と情報を少なくすることを心がけましょう

当たり前の話かもしれませんが、初対面の方と会う時に、身だしなみに全く気を使わないなんてことありませんよね?
相手に不快感を与えない様な身だしなみに整えることは前提として、香水や匂いのある食べ物にも気をつけましょう。相手に「早く帰りたい・・・」なんて思われてしまったら大失敗です。

服装については、相手がどんな格好でくるかもわかりませんし、少し迷ってしまいますよね。
スーツですと相手が緊張してしまう場合がありますし、ラフすぎると少し失礼かもしれません。
エフカフェでは個性をできるかぎり無くした服を着ることを心がけています。(衿付きのシャツとパンツなど)色も、モノトーンやベージュなど目立たない色を選ぶ様にしています。
これは相手に余計な情報を与えないことも意図としています。

相手が自分の話だけに集中できる環境をつくることが大切です。
インタビュー時は自分の見た目にいつもより少し気をつけてみましょう。

最初にしっかりと説明する

初めての場所で初めて会う人ばかり…インタビューを受けに来てくれた方は不安を抱えています。不安を取り除くことがラポール形成への最初の一歩となります。

【1】インタビューを受けてくださったお礼を伝える
ご協力くださることへの感謝の気持ち、約束通りに来てくださったことのお礼を伝えてください。初めての場所、人に不安になっている相手に、「ここに来て良かったんだ。」と思ってもらいましょう。

【2】しっかり自己紹介を
初めて会うよく知らない人に自分のことをなんでも話すなんて、怖くて難しいですよね。
まずは自分が誰で、なんのためにここに居るのかをしっかり説明してください。

例:「はじめまして、株式会社エフカフェのイセです。普段はECサイトの制作や運用を行っています。今日は〇〇会社の代理で△△様に普段お使いの商品や、お買い物に関することをインタビューさせていただきます。よろしくお願いいたします。」

【3】あなたのどんな話でも聞きたいと伝える
インタビューでは、一見サービスや商品と関係ない質問も沢山します。
相手は「使ってる〇〇のインタビュー」だと思って来たのになんでこんなことまで聞くの?と不安になるかもしれません。
どんな些細な話も役に立つ情報なので、なんでも話して欲しいと最初に伝えておきましょう。

例:今日は△△様の色々なお話を伺えたらと思っています。〇〇を使っている方がどんなご職業なのか、何がお好きで、普段どのような生活を送っているのか等個人的な事をお聞きします。どんな情報も欠かせないものなので、お答えいただける範囲で結構ですので、たくさんお話いただけますと嬉しいです。

ラポールの形成とは信頼関係

ラポールの形成とは要は「信頼関係」です。出会ってすぐの短時間で信頼関係を築くなんて難しいですよね。でも難しいことは考えずにまずは、目の前にいる人に興味を持ちましょう。目の前の人のことだけを知りたいという気持ちを持って接すれば、相手も応えてくれるはずです。

インタビュー実践時のコツ

相手への理解を深めましょう

楽しくおしゃべりするように、まずは相手のことを知っていきましょう。その人が詳しくて、よくイメージして話せる話題から質問を始めます。最初からダイレクトに価値観について聞いても、答えられる人は多くありません。その人の嗜好やエピソードを知ることで、後に価値観や行動を裏付ける理由となり、理解が深まっていくはずです。また、ユーザー自身が自覚していない価値観や行動心理を引き出せる場合もあります。

書籍では、以下の様な情報に注目すべきだと記載されています。

・その人が大切に思っていること、嬉しいことはなにか
・困っていること、改善したいことはなにか
・これからどうなりたい、どうしたいと思っているか
・あるモノやコトは、その人にとってどんなものか

例えば、こんな質問から始めるのがおすすめです。
・平日の過ごし方、休日の過ごし方
・好きな時間や嫌いな時間
・仕事の上で大事にしていること
・時間やお金があったら何がしたいか

また、なるべく明るく気さくな雰囲気で進めることをおすすめします!
なんでも話せる寛容な人物として印象付けると相手が沢山話してくれます。

情報収集の方法を聞いてみる

ユーザーが普段触れているメディアや、情報を得る機会についてを聞いてみましょう。ここでひとつ気をつけたいのが、話をWebに限定しないことです。特に若い世代のユーザーですとWebで情報を集めていると思い込みがちですが、広い視点で考えましょう。
テレビや雑誌はもちろんのこと、友人や家族からの場合もあるでしょう。
また、どんな状況で何を使って調べるのかも聞いてみるのもライフスタイルや背景を知る良い機会です。

クローズドクエスチョンの前にオープンクエスチョンを!

インタビューでは質問の聞き方がとても重要になります。
「このWebサイトは使いやすいですか?」と聞くと相手は”はい”か”いいえ”で答えてしまい会話が終了してしまいます。これはクローズドクエスチョンです。インタビューでは理由が知りたいので、この場合は「このWebサイトを使っていていかがですか?」と相手が考える必要がある聞き方をするのがおすすめです。これがオープンクエスチョンです。

また、書籍ではオープンクエスチョンを投げかけることで得られる情報が返答内容だけではないと記載されています。

相手がどんな言葉や表現を選んで答えるのかを確認できるところや、回答に応じて、そこから先にどんどん話を展開していけるところにあります。

「使ってみていかがですか?」という答えに対して、「写真の大きさがいまいち」と答えられれば、サイズ感が重要ということがわかり、どんな大きさだと良いのかという話に展開できそうですね。

インタビューを振り返ろう

インタビューを行ったら、録音や録画を必ず見返しましょう。少し勇気が必要かもしれませんが、がんばってください。自分の口癖や、声の通り方、質問の癖などを振り返ることができます。

私がユーザーインタビューを始めた頃、自分が誰が見ても緊張していることがバレバレな表情をしていることを録画を見て知りました。
そのため相手にも緊張感が伝わってしまい、ラポールの形成ができていない事に気が付くことができました。それからは、なるべく笑顔を意識したことで前回より深いインタビューができたと思っています。

先輩インタビュアーや同僚にも録画録音を見てもらいフィードバックをぜひもらいましょう。自分では気づかない癖があるはずです。

また、本書ではインタビューに慣れてきた頃にも注意が必要と書かれています。
こちらは相手が変わっても、いつも通りの質問を何度もすることになるかもしれませんが、相手にとっては初めての質問が大半でしょう。
同じ質問をしたとしても、相手の受け止め方は千差万別です。インタビュアーの経験による予測や思い込みによってインタビューは思わぬ方向に進んでしまい、台無しになってしまう場合だってあるのです。だからこそ、一回ずつを大切にしてほしいと本書では語られています。

一期一会だからやり甲斐がある、反応が十人十色だからこそ質問を練る必要がある、そんな風に考えられる人ならきっと、どんどん上達するはずです。本書がその一助になれば幸いです。

さいごに

今回は、ユーザーインタビューを行う上での最低限の心得について紹介いたしました。
行うたびに発見や驚きがあるユーザーインタビューは、奥深く難しいなと日々感じています。
インタビューでは欲しい回答を得ることではなく、ユーザーを知ることが目的です。
インタビューを受けてくださる方の中には、不安を抱えてお越しになる方も居れば、お話したくて仕方ない!という方もいます。
その方に合わせた話し方や、進め方を意識してたくさんの情報を相手から引き出しましょう。
セオリーも大切ですが、人と人とがコミュニケーションを取る以上、思い通りにならないことの方が多いということを前提に置いておくと良いかもしれませんね。

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