ヒューリスティック分析とは?調査方法と手順を解説

ヒューリスティック分析とは?調査方法と手順を解説

ヒューリスティック分析とは?調査方法と手順を解説

 

「WebサイトやアプリのUI/UXを改善したいけれど、何から手をつければよいかわからない」と悩むWeb担当者の方は少なくありません。ユーザー体験を向上させるには、ユーザー視点で課題を洗い出し、改善策を講じることが重要です。

その有効な手段の一つがヒューリスティック分析です。本記事では、ヒューリスティック分析の概要や実施手順、具体的な評価項目について解説します。この手法を活用して、よりユーザーフレンドリーなWebサイトやアプリの構築に役立ててください。

ヒューリスティック分析とは?

ヒューリスティック分析とは、UI/UXの評価手法の一つです。人間が持つ認知特性や心理的な法則に基づく「ヒューリスティック」と呼ばれる経験則を利用して、ウェブサイトやアプリなどの使いやすさやわかりやすさを評価します。

専門家である評価者が、あらかじめ定められた評価基準に基づいて、対象となるウェブサイトやアプリを操作し、問題点や改善点を洗い出す手法です。評価基準は、10個程度のヒューリスティックから構成されており、例えば「ユーザーは迷わずに目的を達成できるか」「システムはユーザーの期待通りに動作するか」などが挙げられます。

「ヒューリスティック」とは?

ヒューリスティックとは、経験や直感に基づいた「発見的な思考」を指します。語源はギリシャ語の「heuriskein(発見する)」です。この概念を応用したヒューリスティック分析は、完璧な手法ではないものの、問題解決や意思決定において非常に効果的です。

ヤコブ・ニールセンの10のユーザビリティヒューリスティック

ヤコブ・ニールセンは、1990年代に10のユーザビリティヒューリスティックを提唱しました。これは、ユーザビリティを評価するための10の原則であり、Webサイトやアプリケーションのユーザビリティを改善するために広く活用されています。

ニールセンのヒューリスティックは以下の10個です。

  • 視認性システムの状態: システムの状態は常にユーザに明確に伝えられ、適切なフィードバックが提供される。
  • システムと現実世界のマッチ: システムの言語、概念、メタファーは、ユーザにとって馴染みのあるものであり、現実世界の状況に似ている。
  • ユーザコントロールと自由: ユーザは、誤った操作を行った場合でも、簡単に元に戻したりやり直したりできる。
  • 一貫性と標準: システム全体で一貫したデザイン、用語、操作方法が用いられている。
  • エラーの防止: システムは、エラーが発生する可能性を最小限に抑え、エラーが発生した場合でもユーザに分かりやすく伝える。
  • 認識負荷の軽減: ユーザは、システムを操作するために多くの情報を記憶したり、複雑な手順を覚える必要がない。
  • 柔軟性と効率性: システムは、熟練したユーザだけでなく、初心者でも効率的に操作できる。
  • 美的でミニマルなデザイン: システムは、美しく、無駄のないデザインであり、ユーザにとって重要な情報が明確に提示されている。
  • ヘルプとドキュメント: システムは、ユーザが困ったときに簡単にアクセスできるヘルプとドキュメントを提供している。
  • ヘルプの検索: システムは、ユーザがヘルプやドキュメントを簡単に検索できる。

ニールセンのヒューリスティックは、Webサイトやアプリケーションのユーザビリティを評価するための強力なツールです。これらの原則を参考に、ユーザにとって使いやすいシステムを設計することで、ユーザ満足度の向上やビジネスの成功に貢献することができます。

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ヒューリスティック分析を実施するタイミング

ヒューリスティック分析は、様々なタイミングで実施することができます。主なタイミングとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 新規サービスや機能の開発時:開発の初期段階で実施することで、ユーザビリティの問題点を早期に発見し、修正することができます。
  • 既存サービスや機能の見直し時:既存のサービスや機能にユーザビリティの問題がないか、定期的にチェックするために実施します。
  • 競合他社のサービスや機能を分析する時:競合とのユーザビリティの比較を行い、自社のサービスや機能の改善に役立てるために実施します。

ヒューリスティック分析のメリットとは?

ヒューリスティック分析は、ユーザーテストやアイ・トラッキングなどの他の評価手法と比較して、以下のようなメリットがあります。

競合との比較ができる

競合他社のサービスやアプリと比較することで、自社のウェブサイトやアプリのユーザビリティがどの程度優れているのか、あるいは劣っているのかを把握することができます。また、競合の優れた点や改善点などを分析することで、自社のサービス改善のヒントを得られます。

データだけでは見えない問題点を発見できる

アクセス解析などのデータ分析では、ユーザーの行動を数値で把握することはできますが、その背景にある心理や思考までは読み取れません。ヒューリスティック分析では、専門家がユーザーの視点に立って評価を行うことで、データだけでは見えない問題点を発見することができます。

例えば、ウェブサイトの分析で、あるページの離脱率が高いことがわかったとします。データだけを見れば、そのページの内容が良くないことが原因だと考えられますが、ヒューリスティック分析を行うことで、ページの構成やナビゲーションの分かりにくさが原因である可能性が見えてきます。

実施しやすい

ヒューリスティック分析は、以下の理由から実施しやすいのが特徴です。


特別なスキルや知識が必要ない

専門的な知識やスキルは必要ありません。評価基準を理解していれば、誰でも実施することができます。


短時間で実施できる

ユーザーテストのように、被験者を募集したり、実験環境を用意したりする必要がないため、短時間で実施することができます。


低コストで実施できる

特別なツールや設備を必要としないため、低コストで実施することができます。

ヒューリスティック分析の手順とは?

ヒューリスティック分析の手順は主に4つのステップから成り立っています。

前提条件を設定する

ヒューリスティック分析を実施する前に、以下の前提条件を設定する必要があります。

  • 分析対象: 分析対象となるWebサイトやアプリを明確にする。
  • 分析目的: 分析を実施する目的を明確にする。
  • 分析対象のユーザ: 分析対象となるWebサイトやアプリのターゲットユーザを明確にする。
  • 評価項目: 分析項目となるヒューリスティック評価基準を明確にする。
  • 評価基準: 各評価項目に対して、満たすべき基準を明確にする。

これらの前提条件を設定することで、分析結果の妥当性や信頼性を高めることができます。

評価項目と評価基準のリスト設定

ヒューリスティック分析を実施する際には、事前に評価項目と評価基準をリストアップしておく必要があります。

評価項目は、分析の対象となる要素や機能を指し、評価基準は、各評価項目を判断するための具体的な基準となります。

評価項目と評価基準は、分析対象となるサービスや製品に合わせて設定する必要があります。

評価項目

  • ユーザビリティ
  • 情報アーキテクチャ
  • アクセシビリティ
  • コンテンツ
  • グラフィックデザイン
  • インタラクションデザイン

評価基準

  • ユーザビリティ:使いやすいか、直感的か、学習しやすいのかなど
  • 情報アーキテクチャ:情報が見つけやすいか、整理されているか、階層構造が適切かなど
  • アクセシビリティ:すべての人が利用できるか、障害のある人も利用できるかなど
  • コンテンツ:正確性、信頼性、読みやすさ、適切性など
  • グラフィックデザイン:視覚的に魅力的か、ブランドイメージに合っているか、使いやすさを妨げていないかなど
  • インタラクションデザイン:反応速度、操作性、一貫性など

実施

評価項目と評価基準をもとに、実際に製品やサービスを操作して評価を行います。この際には、ターゲットユーザーの視点に立って操作し、ユーザビリティの問題点を発見していきます。

課題を抽出し改善策を導き出す

分析の結果、問題点が発見されたら、その問題の重要度や緊急度を評価し、優先順位をつけて改善策を検討します。改善策の検討にあたっては、ユーザー調査や他の評価手法と組み合わせることも効果的です。

ヒューリスティック分析のポイント

ヒューリスティック分析を実施する際には、以下のポイントを意識することが重要です。

  • ユーザー視点での評価: 常にユーザーの視点に立って、インターフェースを評価することが重要です。
  • 複数人で評価: 複数人で実施することで、多角的な視点から評価し、より多くの問題点を発見することができます。
  • 評価基準の明確化: あいまいな基準ではなく、具体的な評価基準を事前に設定しておくことで、評価の精度を高めることができます。
  • 改善策の検討: 問題点の発見だけでなく、具体的な改善策まで検討することで、より実用的な分析結果を得られます。

ヒューリスティック分析の留意点

  • 定性的な評価手法: ヒューリスティック分析は、あくまで定性的な評価手法であり、定量的なデータを得ることはできません。そのため、ユーザーテストなどの定量的な評価手法と組み合わせて実施することが有効です。
  • 分析者の主観: 分析者の経験や知識に依存するため、分析者の主観が入り込みやすいという側面があります。複数人で評価を行う、評価基準を明確にするなど、主観の影響を最小限に抑える工夫が必要です。
  • 問題点の発見: ヒューリスティック分析は、あくまでもユーザビリティの問題点を発見する手法であり、具体的な解決策を提示するものではありません。問題点の解決策を検討するためには、ユーザー調査などの他の評価手法を併用する必要があります。

まとめ

ヒューリスティック分析とは、ユーザーの経験に基づいた経験則や認知心理学の知見を用いて、ウェブサイトやアプリなどのユーザインターフェースのユーザビリティを評価する手法です。熟練した専門家が行うことにより、短時間かつ低コストで実施でき、競合との比較やデータだけでは見えない問題点の発見に役立ちます。

ヒューリスティック分析は、ユーザー視点に立った改善に役立つ効果的な手法です。ウェブサイトやアプリのユーザビリティ向上を目指す際には、ぜひ活用してみてください。

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