越境ライブコマース完全ガイド|中国攻略法
越境ライブコマース完全ガイド|中国攻略法

目次
「海外の顧客に自社商品を届けたい」「国内市場の成長に限界を感じている」
このような課題を抱える企業担当者様にとって、越境ECは新たな活路を開く重要な戦略です。中でも、圧倒的な販促力で注目を集めているのが「越境ライブコマース」です。
しかし、その可能性は理解しつつも、「具体的に何から始めればいいのか」「どの国を狙うべきか」「費用はどれくらいかかるのか」といった疑問から、一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、越境ECにおけるライブコマースの基本から、最重要市場である中国を攻略するための具体的な方法、プラットフォームの選び方、成功事例、費用感まで、初心者の方が知りたい情報を網羅的に解説します。
この記事を読めば、あなたの会社が越境ライブコマースで成功するための、明確なロードマップを描けるようになるはずです。
越境ライブコマースとは?市場規模と3つのメリット
越境ライブコマースとは、インターネットのライブ配信を通じて海外の消費者へ商品を販売する手法です。ECサイトとライブ配信を組み合わせた「ライブコマース」を、国境を越えて行うことから「越境ライブコマース」と呼ばれています。
視聴者はリアルタイムで配信者(ライバー)とコミュニケーションを取りながら、商品の詳しい説明を受け、その場で購入まで完結できるのが最大の特徴です。
中国の調査会社iResearchによると、中国のライブコマース市場規模は2023年には4.9兆元(日本円で約94兆円)に達すると予測されており、その勢いはとどまるところを知りません。この巨大な市場にアプローチできる越境ライブコマースには、従来の越境ECにはない大きなメリットがあります。
(参考:艾瑞咨询 iResearch https://www.iresearch.com.cn/)
圧倒的に高いコンバージョン率(CVR)
ライブコマースは、テキストや画像だけでは伝わらない商品の魅力を、動画とリアルタイムの対話で伝えられます。視聴者の疑問や不安にその場で答えることで信頼関係が生まれ、購買意欲が劇的に高まります。一般的なECサイトのCVRが1〜2%なのに対し、ライブコマースでは10%を超えることも珍しくありません。
商品の魅力やストーリーを深く伝えられる
商品の使い方や質感、開発秘話といったストーリーを詳しく、かつ臨場感をもって伝えられるのはライブ配信ならではの強みです。例えば、化粧品ならライバーが実際に使用してテクスチャーを見せたり、アパレルなら様々な角度から着用感を見せたりすることで、視聴者は自分が使った際のイメージを具体的に描くことができます。
KOL(ライバー)による強力なファンマーケティング
現地の人気インフルエンサーであるKOL(Key Opinion Leader)やライバーを起用することで、彼らが抱える数万〜数百万人のファンに一気にアプローチできます。単なる広告塔としてではなく、KOLが「本当におすすめしたい商品」として紹介することで、ブランドへの信頼性が増し、熱量の高いファン(優良顧客)の獲得につながります。
越境ライブコマースの始め方5ステップ
越境ライブコマースを成功させるためには、計画的な準備が不可欠です。ここでは、企画から実施までの流れを5つのステップに分けて具体的に解説します。
ステップ1. ターゲット国と販売チャネルの決定
最初に「どの国で、どのプラットフォームを使って売るか」を決めます。市場規模が大きく日本製品への関心も高い中国や、経済成長が著しい東南アジア(特にシンガポールやタイ)が主要なターゲット国となります。
ターゲット国を決めたら、次に販売チャネル(プラットフォーム)を選定します。国によって主流となるプラットフォームは大きく異なります。
中国: 淘宝直播(タオバオライブ)、抖音(ドウイン/中国版TikTok)
東南アジア: Shopee Live、Lazada(LazLive)
各プラットフォームの特徴やユーザー層を比較検討し、自社の商品やブランドイメージに合った場所を選びましょう。
ステップ2. 商品選定と物流・決済体制の構築
次に、ライブコマースで販売する商品を決めます。現地のニーズやトレンドを調査し、「売れる」商品を選定することが重要です。化粧品、アパレル、ベビー用品、健康食品などは特に人気が高いカテゴリーです。
同時に、国際物流(ロジスティクス)と決済手段を確保しなければなりません。商品を海外の購入者に確実に届けるための配送網や、現地の消費者が使いやすい決済方法(Alipay、WeChat Pay、クレジットカードなど)を導入する必要があります。自社での対応が難しい場合は、越境ECに特化した物流・決済代行サービスを利用するのが一般的です。
ステップ3. ライブ配信の企画と台本作成
誰に、何を、どのように伝えるかを具体的に計画します。
目標設定: 売上目標、新規顧客獲得数など、具体的なKPIを設定します。
ターゲット設定: どのような顧客層にアプローチしたいかを明確にします。
コンテンツ企画: 商品紹介だけでなく、視聴者参加型のクイズや限定クーポンの配布など、飽きさせない工夫を盛り込みます。
台本作成: 配信の時間配分、紹介する商品の順番、ライバーが話す内容の骨子などをまとめた台本を作成します。ただし、ガチガチに固めるのではなく、視聴者との対話を重視した柔軟な構成が求められます。
ステップ4. ライバー(KOL)の選定と契約
ライブコマースの成功を最も大きく左右するのがライバー(KOL)の選定です。フォロワー数だけでなく、以下の点を総合的に判断して選びましょう。
商品との親和性: ブランドイメージや商品カテゴリーとライバーのキャラクターが合っているか。
エンゲージメント率: 「いいね」やコメント数が多く、ファンとの交流が活発か。
過去の実績: これまでのライブコマースでの販売実績。
起用したいライバーが決まったら、所属事務所や本人と交渉し、報酬や配信内容について契約を結びます。
ステップ5. プロモーションとライブ配信本番
ライブ配信の事前告知(プロモーション)は非常に重要です。SNSや起用するライバーのアカウントで「いつ、どこで、何を売るのか」を数日前から告知し、期待感を高めて視聴者を集めます。
配信当日は、機材トラブルなどがないか入念にチェックし、台本に沿ってライブを実施します。配信中もコメントを細かくチェックし、視聴者からの質問に丁寧に対応することが、売上と満足度を高める鍵です。配信終了後は、売上データや視聴者からのフィードバックを分析し、次回の改善につなげましょう。
中国市場の重要ポイント
越境ライブコマースで成果を出すには、ターゲット国の市場特性を深く理解した上で戦略を立てることが不可欠です。ここでは、最重要市場である「中国」の攻略ポイントを解説します。
巨大市場「中国」向けライブコマースの必勝法
中国は越境ライブコマースの世界最大の市場であり、成功すれば莫大なリターンが期待できます。
市場特性
ライブコマースが日常的な購買行動として定着。
トップKOLの影響力が絶大で、彼らが紹介した商品は瞬く間に完売することも珍しくありません。代表的なKOLとして、口紅王子こと「李佳琦(Austin Li)」や「薇娅(Viya)」が有名です。
「独身の日(11月11日)」や「618商戦(6月18日)」といった大規模セールイベント期間は、売上が爆発的に伸びる最大のチャンスです。
必勝ポイント
プラットフォームの使い分け: 購買意欲の高いユーザーが集まるアリババ系の「淘宝直播(タオバオライブ)」と、ショート動画からの流入が多く若者に人気の「抖音(Douyin)」の特性を理解し、目的に応じて使い分けることが重要です。
KOL選定の重要性
トップKOLは依頼費用も高額なため、まずは自社ブランドと親和性の高い中堅KOLやマイクロKOLから始め、実績を積んでいくのが現実的です。法規制への対応: 近年、中国では個人情報保護法や広告法などの規制が強化されています。誇大な表現や根拠のない効果効能を謳うことは厳禁です。現地の法律に詳しい専門家のサポートを受けることを強く推奨します。
成功の鍵を握るプラットフォームとライバー選定
どのプラットフォームを選び、誰に紹介してもらうかは、越境ライブコマースの成果を大きく左右する最重要項目です。
主要プラットフォーム3選|淘宝直播・抖音・ShopeeLive
数あるプラットフォームの中から、特に重要度の高い3つをご紹介します。
淘宝直播 (タオバオライブ)
アリババグループが運営する、中国最大のECプラットフォーム「淘宝(タオバオ)」に搭載されたライブ機能です。もともと買い物目的のユーザーが集まっているため、非常に高い購買率を誇ります。ECサイトとの連携がスムーズで、在庫管理から決済までシームレスに行えるのが強みです。
(公式サイト: https://taolive.taobao.com/)
抖音 (ドウイン)
中国版TikTokとして知られるショート動画プラットフォームです。エンターテインメント性が高く、若者を中心に絶大な人気を誇ります。面白いコンテンツで興味を引き、衝動買いを誘発するのが得意なプラットフォームです。ライブ配信機能も強化されており、近年ECプラットフォームとしての存在感を急速に高めています。
(公式サイト: https://www.douyin.com/)
Shopee Live (ショッピーライブ)
東南アジア・台湾で最大級のECプラットフォーム「Shopee」のライブ機能です。アプリ内でライブ視聴から購入までが完結するため、ユーザーの離脱が少ないのが特徴です。Shopeeが頻繁に実施する大型セールや送料無料キャンペーンと連動させることで、大きな相乗効果が期待できます。
(公式サイト: https://shopee.sg/)
失敗しないライバー(KOL)の選び方と費用感
良いライバーは、商品を売る「販売員」であると同時に、ブランドの価値を伝える「伝道師」でもあります。選定を誤ると、費用をかけたにもかかわらず全く売れないという事態になりかねません。
選ぶ際のチェックポイント
フォロワーの質: フォロワー数はもちろん、そのフォロワー層が自社のターゲットと一致しているかを確認します。
エンゲージメント率: 投稿に対する「いいね!」やコメントの割合をチェックし、ファンとの関係性が良好かを見極めます。
過去の販売実績: 可能であれば、過去に担当したライブコマースでの具体的な販売実績データを確認させてもらいましょう。
人柄と熱意: 誠実な人柄で、本当に商品を好きになって熱意をもって紹介してくれるかどうかが、視聴者の心を動かす上で最も重要です。
費用感
ライバーへの依頼費用は、知名度や実績によって大きく異なります。
マイクロKOL: 数万円〜数十万円
中堅KOL: 数十万円〜数百万円
トップKOL: 数百万円〜数千万円以上
報酬形態は、配信1回あたりの「固定報酬」と、売上の一部を支払う「成果報酬(レベニューシェア)」を組み合わせるのが一般的です。
越境ライブコマースの成功事例3選
ここでは、実際に越境ライブコマースで大きな成功を収めた日本企業の事例を3つご紹介します。自社で取り組む際のヒントにしてください。
アパレル「SNIDEL」の中国向けライブ配信事例
レディースアパレルブランドの「SNIDEL」は、中国の「独身の日」に合わせてKOLを起用したライブコマースを実施。ブランドの世界観と親和性の高いKOLが、商品の素材感やコーディネートを丁寧に紹介したことでファンの心を掴み、配信開始からわずか数分で数千万円の売上を達成しました。ターゲット層に響くKOL選定と、イベント時期を捉えた戦略が見事に成功した事例です。
(参考:株式会社マッシュホールディングス https://www.mash-holdings.com/)
化粧品「ヤーマン」のダブルイレブンでの成功事例
美容機器メーカーの「ヤーマン」は、中国最大のセールイベント「ダブルイレブン(独身の日)」において、トップKOLである李佳琦(Austin Li)氏を起用したライブ配信を実施しました。李佳琦氏による巧みな商品説明と実演により、人気美顔器がライブ中に数万台以上も販売され、驚異的な売上を記録しました。トップKOLの圧倒的な影響力を最大限に活用した、中国市場攻略の代表的な成功事例と言えます。
(参考:ヤーマン株式会社 https://www.ya-man.co.jp/)
食品メーカーの東南アジア向けライブコマース事例
ある日本の大手食品メーカーは、ハラル認証を取得した商品を東南アジアのイスラム市場向けに販売するため、Shopee Liveを活用しました。現地の人気ママインフルエンサーを起用し、商品の安全性や子供向けのアレンジレシピを紹介。ターゲットである主婦層の共感を呼び、ライブ配信限定のクーポンも後押しとなって、目標を大幅に上回る売上を達成しました。現地の文化やニーズに寄り添った企画が成功の鍵となった事例です。
越境ライブコマースの費用相場と内訳
越境ライブコマースを実施するには、様々な費用がかかります。ここでは、主な費用の内訳とその目安について解説します。予算計画の参考にしてください。
初期費用と運用費用の目安
越境ライブコマースを始めるには、ECプラットフォームへの出店料などの初期費用と、ライブ配信を継続するための運用費用がかかります。自社で全てを行うか、専門の支援会社に依頼するかで大きく変動します。
初期費用: 数十万円〜数百万円(ECサイト構築、プラットフォーム出店、アカウント開設など)
運用費用(月額): 数十万円〜(運営代行、広告宣伝、コンサルティングなど)
ライバー(KOL)への依頼費用
費用の内訳で最も大きな割合を占めるのがライバーへの依頼費用です。前述の通り、フォロワー数や影響力によって金額は大きく変動します。
マイクロKOL: 数万円〜数十万円
中堅KOL: 数十万円〜数百万円
トップKOL: 数百万円〜数千万円以上
これに加えて、売上の5%〜30%程度の成果報酬(レベニューシェア)が発生するのが一般的です。
プラットフォーム利用手数料
ライブコマースを実施するプラットフォームに対して、売上に応じた手数料を支払う必要があります。手数料率はプラットフォームや契約内容によって異なりますが、一般的には売上の5%〜30%程度が目安となります。
まとめ
本記事では、越境ライブコマースの基本から、中国・シンガポール市場の攻略法、具体的な始め方、成功事例、費用感までを網羅的に解説しました。
最後に、重要なポイントを振り返ります。
越境ライブコマースは、高いコンバージョン率とファン獲得を実現できる強力な海外販売手法です。
成功の鍵は、ターゲット国(特に中国・シンガポール)の市場特性を深く理解することです。
プラットフォームとライバー(KOL)の選定が、成果を大きく左右します。
企画、物流、プロモーション、分析といった計画的な準備が不可欠です。
越境ライブコマースは、もはや一部の大企業だけのものではありません。正しい知識と戦略があれば、中小企業でも海外の巨大なマーケットに挑戦し、大きな成果を上げることが可能です。
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